2004年9月2日(木)「しんぶん赤旗」
神奈川県の逗子市と横浜市にまたがる米海軍・池子住宅地区の横浜市域(金沢区)に、米軍住宅八百戸を増設する計画が、緊迫した局面を迎えています。国のかたくなな姿勢に対して逗子市の長島一由市長は、増設計画は同市との約束に反するとして国を相手に提訴の構えを示しています。神奈川県・岡田政彦記者
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神奈川県では、米軍の地球規模での再編に伴って、基地を集約し、強化する動きが相次いでいます。
米海軍・横須賀基地では、二〇〇八年に退役する通常型空母キティホークに代わって、より大型で最新鋭の空母として、原子力空母の配備計画が浮上。座間市、相模原市にまたがる米陸軍キャンプ座間には、アジア・太平洋全域への軍事介入を任務とする米陸軍第一軍団の司令部を、米本土から移転する計画が示されています。
こうした米軍基地の動きには、自治体や住民から疑問や反発の声があがっています。池子への米軍住宅増設計画も、米軍基地の集約・強化の一環です。
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池子住宅地区の逗子市側には、貴重な森を破壊して米軍住宅八百五十四戸(一九九八年三月完成)が建っています。
今回の米軍住宅の増設計画は、逗子市側への米軍住宅建設のさいに、「追加建設はない」とした国・県・逗子市の三者合意(一九九四年)などに反するものでした。
新日本婦人の会逗葉支部長の梅川照子さん(65)は「首都圏に手つかずの森がかたまってあることに価値があるのに、米軍住宅のために破壊するなんて」と怒ります。
増設計画をめぐる日米協議では、住宅増設を、横浜市内の遊休化した上瀬谷、深谷、富岡と、米軍住宅四百戸がある根岸の米海軍四基地を返還する条件としました。
これは、日米地位協定で、使用目的が終了し、遊休化した基地は「いつでも、日本国に返還しなければならない」(第二条3項)とした取り決めに反する主張です。
しかも、防衛施設庁の事業説明書(二〇〇〇年)では米軍住宅の不足数は千六百数十戸と記述されています。
返還対象のうち、米軍住宅約六百戸を建設する計画(一九九四年)が作成されていた上瀬谷基地だけは、一部の返還とされていて、池子にとどまらない、さらなる増設に含みを残しています。
こうしたなか、長島逗子市長は八月三日、防衛施設庁に、増設計画を白紙撤回しない場合は、法的手続きをとらざるを得ないと通知しました。
国は二十三日、計画撤回を拒否する回答をし、長島市長は、九月二日から始まる市議会に国を相手にした提訴の議案を提出します。訴えは国に対し池子住宅地区の施設・区域内の緑地の現況保全に配慮し、同地区に米軍住宅を追加建設してはならない義務があることの確認を求める内容です。
梅川さんは「アメリカに好き勝手にされて、いやと言えない政府、これで独立国といえますか。長島市長は、追加建設白紙撤回の立場を貫いてがんばってほしい。市民、市長、議会が一体となって国を押して押しまくりたい」と力を込めます。
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日本共産党は、県民・市民とともに、米軍基地の再編・強化に反対し、米軍住宅増設反対、遊休基地の無条件返還を要求。現地調査や国、県への要請、国会・地方議会での論戦など力を注いできました。
八月十三日、小池晃参院議員、大森猛前衆院議員、畑野君枝前参院議員らは長島市長と懇談し、増設計画の白紙撤回のために力を合わせていくことで一致しました。
小池氏 逗子市の態度に共感しています。全国的な問題として国会でとり上げていきたい。
長島市長 市民の支援を得た立場で堂々と白紙撤回を求めたい。これからも連携させていただく中で、バックアップしていただきたい。
席上、増設計画の背景にある米軍基地の再編・強化も話題になりました。長島市長はこう語りました。
「基地再編で、なぜ日本にだけしわ寄せが来るのか納得できない」
一方、横浜市の中田宏市長は八月四日、基地は無条件返還が「大原則」として、上瀬谷基地の全部など返還対象の拡大を求めながら、増設計画については、撤回ではなく建設戸数の削減を求める声明を出しました。
横浜市金沢区原水協理事の松本志津子さん(69)は「中田市長が条件をつけたとはいえ、米軍住宅建設を容認する内容の声明を出したことに本当に驚いています。住宅建設は、基地の早期返還を求めてきた区民の長年の願いに逆行することです」と話します。
日本共産党県委員会と党横浜市議団は五日に声明を発表し、「横浜市長は国の理不尽な要求に屈せず、『米軍施設の早期全面返還』の立場にたち、遊休米軍基地の無条件即時返還と、横浜市域への新たな米軍住宅建設計画の白紙撤回を求めるべき」だと迫り、そのための運動の先頭に立つ決意を表明しました。