日本共産党

2004年9月3日(金)「しんぶん赤旗」

厚生年金の未加入事業所

社会保険庁が指導強化

職権適用も


厚生年金加入事業所数の推移

 厚生年金への加入事業所が減少している問題で、社会保険庁は、未加入事業所への戸別訪問など「加入指導」を強化するとともに、それでも加入しない事業所には職権で強制加入させる方向で検討に入りました。同庁は、早ければ、年内にも職権適用の方針をまとめて、年度内に実施したいとしています。

 厚生年金は、すべての法人と、常時五人以上の従業員を使用する事業所に加入が義務づけられています。しかし、保険料負担を回避するため加入しない事業所が増え、二〇〇二年度に新しくできた法人の二割近くが厚生年金に加入していないことが判明。加入事業所は年々減少しています(グラフ)。

 これまでの加入指導は、対象事業所を選定し、文書による指導、巡回説明まででした。今回の方針では、加入の届け出をしない事業所にたいし、「社会保険事務所への呼出」による指導を実施し、それでも加入しない事業所については、二十人以上の規模のところから「戸別訪問」による指導を実施します。

 検討されている職権による強制加入は、これらの指導によっても加入しない事業所にたいする「最終的な適用方策」と位置づけられています。



解説

未加入増やす保険料引き上げ

 厚生年金の未加入事業所の増加は、そこで働く従業員が将来受け取る年金に深刻な影響を与えるとともに、厚生年金財政の「空洞化」を招き、年金制度の根幹を揺るがす問題です。社会保険庁が、法にもとづいて事業所に加入促進の指導をすること自体は必要なことです。

 同時に、不況の長期化により経営が悪化し、中小・零細の事業所が保険料負担に耐えられなくなっていることも、未加入事業所が増えている原因です。自民、公明の小泉内閣が強行した年金改悪法は、十月から厚生年金保険料を0・354%(労使折半)引き上げます。十四年連続の引き上げにより、現行で13・58%の保険料は二〇一七年度以降は18・3%になります。これにより、未加入事業所がいっそう増大する可能性があります。

 未加入事業所の増大のもう一つの要因は、年金制度への信頼低下です。国民から集めた保険料を社会保険庁が長官の「香典代」や公用車の購入費などに流用したり、年金改悪法の国会審議で「給付は現役世代の50%確保」と国民に偽りの説明をし、改悪法強行後も少子化のデータ隠し、条文ミスの発覚などにより、国民の年金不信は頂点に達しています。

 年金への信頼を取り戻すには、国民の七―八割が廃止、やり直しを求めている年金改悪法を白紙に戻し、真の年金改革に向けた国民的討論を行う以外にありません。

 山岸嘉昭記者



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