2004年9月9日(木)「しんぶん赤旗」
沖縄国際大学(沖縄県宜野湾市)への米海兵隊輸送ヘリCH53D墜落事故をめぐって、六、七日の両日、衆参両院の沖縄北方特別委員会で閉会中審査が行われました。二日間の論戦で、沖縄県民を危険にさらす普天間基地の閉鎖・無条件撤去や基地たらい回しのSACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)合意の見直し、日米地位協定の改定を求める世論と、かたくななまでにSACO路線と米軍擁護に終始する政府との矛盾があらためて鮮明になりました。
「事故現場の周辺には大学のかべや機体の破片が飛び散っている。犠牲者が出なかったことは奇跡的としかいいようがない」。日本共産党の紙智子議員は、事故現場の調査を紹介するとともに、危険な事故を繰り返す米海兵隊普天間基地の閉鎖・撤去を求める声が急速に高まっていることを指摘しました。(七日、参院特別委)
日本共産党の穀田恵二国対委員長も、普天間基地の県内移設を定めたSACO合意以降の八年間、政府が進めてきたのは新基地建設の推進だけであり、普天間基地の米軍機の飛行回数は一九九七年には一日平均六十四回だったのが、〇三年には百五回と、危険性はむしろ増していることを指摘。SACO合意の見直し、普天間基地の即時閉鎖・撤去を求めました。(六日、衆院特別委)
紙氏も、日本政府がSACO合意に固執し、新基地建設を推進することで「普天間基地の危険を拡大してきた」と批判。普天間基地に隣接する小学校での緊急アンケートも示し、一刻も早い解決を求めました。
民主・社民両党の沖縄出身議員も、普天間基地の無条件返還を要求しました。
しかし、川口順子外相は「日米安保体制の重要性」を理由に、沖縄県名護市沖への移設に固執。事実上、普天間基地の危険性を放置する姿勢を示しました。
「ただちに地位協定違反とはいえない」――。
政府は、墜落事故をめぐる一連の米軍の行為の正当化に終始しました。
外務省の海老原紳北米局長は、米軍による事故現場の封鎖は「日米地位協定一七条にもとづき、許可のない者が立ち入らないよう米軍と警察が共同で統制した」と説明。これに対し、穀田氏は、地元警察の現場検証すらさせない米軍の横暴を批判し、地位協定の抜本的改定を迫りました。
しかし、川口順子外相は「米軍機にはいろんな軍事機密があり、(検証には)米側の同意が必要とされている。これを改定するのは非常に難しい」とのべ、地位協定改定の要求に背を向け、「運用改善」で乗り切ろうとする姿勢を示しました。
事故の被害者である大学の財産権をないがしろにする政府の姿勢も浮き彫りになりました。
米軍が「事故機撤去の障害になる」との理由で大学構内の樹木を伐採したことについて、政府は六日の委員会で、「那覇防衛施設局が大学に電話連絡し、伐採への同意を得た」と説明しました。これに対し沖縄国際大学は同日、「墜落以降、米軍および日本政府から正式な大学の財産(土地、施設等)の使用許可願いは一切受けておらず、許可もしていない。伐採の説明を受けただけ」との学長コメントを発表。
それでも政府は、「許可は得た」(七日、山中昭栄防衛施設庁長官)と繰り返しました。