2004年9月11日(土)「しんぶん赤旗」
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有事法(武力攻撃事態法)に基づき十日に閣議決定された「指定公共機関」は、政府や地方自治体とともに、戦争への対処措置の実施を「責務」として課せられます。
具体的には、国民の戦時動員・統制を目的とした「国民保護」法に基づき、武力攻撃が予測される場合などに、(1)住民の避難(警報、輸送)(2)避難住民の救援(医療など)(3)武力攻撃災害への対処(4)価格統制、生活基盤の確保(5)復旧、備蓄――といった業務を行うことが求められます。
「国民保護」法は、「避難」や「救援」を口実に、米軍や自衛隊の軍事作戦を円滑に遂行することを最大の狙いにしています。その作戦範囲は広域にわたるため、自然災害への対処を定めた「災害対策基本法」に基づく指定公共機関六十二法人を大きく上回り、百六十法人が指定されました。
内訳を比較すると、運送事業者が八法人から七十八法人と激増し、放送事業者もNHKだけだったのが、在京キー局をはじめ民放十九社を加え、二十法人になっているのが最大の特徴です。
運送業者では、災対法でJR各社と日本通運だけだったのが、航空各社をはじめ私鉄、地下鉄、バス、フェリー、貨物船、日通以外のトラック事業者が加わり、ほぼ全面的に動員されることになります。
放送事業者は、政府が発信する警報や戦況の放送を義務付けられます。政府主導の情報統制・世論誘導の狙いは明らかです。
政府は「自主的な協力」といいますが、対処措置の指示は、事業の許認可権を有する所管省庁を通じて行われます。さらに、現場の労働者には、会社の「業務命令」として戦争協力が課せられる危険があります。
このため、指定公共機関の指定にいたる過程で、多くの法人が「自主性を侵害される」「危険にさらされる」といった懸念を表明してきました。
航空各社が加盟する定期航空協会は「航空運送事業者にとって運航の安全の確保は企業存立の基盤、事業運営の大前提」と重ねて主張。日本民間放送連盟は「いかなる緊急事態であっても市民の基本的人権および知る権利を守り、自由で自律的な取材活動を貫く」という「基本姿勢は変わらない」との立場です。
陸海空・港湾労組など、実際に動員される労働者は、戦争協力への動員に強く反対しています。
航空労組連絡会は、「民間航空機もテロの標的とされている」とし、民間航空の軍事利用へ一歩道を進めた今回の「指定」に強く抗議しています。
有事法の発動を許さないことがなにより必要です。
竹下岳記者