2004年9月12日(日)「しんぶん赤旗」
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【ニューヨーク=浜谷浩司】朝の光の中に、ポカッと広大な空間が広がります。同時テロから三年たった十一日の朝。ニューヨークの世界貿易センター跡地を囲む金網に、数多くの花束、写真、人形がさし込まれました。
跡地の脇に掲げられた犠牲者の名前。その前で、名前に届けとばかりに、手を高く伸ばす若い男性がいました。ティム・キャビノ氏です。右手の甲でしきりに目をぬぐっています。
「兄弟よ、愛している。決して忘れないと、話していた。あそこに名のあるスティーブン・ハーフマンは、私の娘の名付け親で、とても親しい友人だった」
ハーフマン氏は、ニューヨーク地域の子どもたちのフットボール・コーチで、有名な大学選手を育てたといいます。
「世界は安全になったかって? 憎しみのあるところに安全はない。憎しみでは問題は解決しない」
三年という期間がそうさせるのか。涙に比べ、キャビノ氏の言葉は明るく聞こえました。
午前八時四十六分(日本時間同日午後九時四十六分)。世界貿易センター跡地で開かれている三周年式典で、黙とうが行われました。そして、犠牲者の名前が読み上げられています。