日本共産党

2004年9月14日(火)「しんぶん赤旗」

「対テロ戦争」は米国を弱体化

撲滅に最も必要な国際協力の妨げに

米研究者が報告書で指摘


 米国のリベラル系情報誌『フォーリン・ポリシー・イン・フォーカス』(FPIF)は、9・11対米同時テロ三周年の十一日までに、9・11以後三年間のブッシュ政権の「対テロ戦争」を「失敗」だと総括し、先制攻撃戦略などの軍事力依存の対応に代わる政治的・法的対処こそが、テロの脅威を減らし米国と世界を安全にするとの報告書を発表しました。

失敗の理由

 「安全な世界の中での安全な米国」と題された報告は、「ブッシュ政権の『対テロ戦争』は、指導の大きな失敗であり、米国をより安全にするのではなく、より脆弱(ぜいじゃく)にしている」と指摘。失敗の理由として、(1)軍事的対応を過度に強調した(2)関係機関の間での情報の共有に失敗した(3)民主主義と市民的自由を掘り崩した(4)米本土の安全を掘り崩した(5)単独行動主義により国際機構を弱体化させた(6)テロを生む根本原因への対応に失敗した―の六点を挙げています。

 報告は、テロ対策には軍事力が限定的な役割しか果たせないにもかかわらず、ブッシュ政権がテロへの対応を「対テロ世界戦争」と位置付けたこと自体が誤りだと強調。この位置付けにより、「勝利の性格が不明確になり、際限のない紛争と軍事化への破壊的な悪循環をもたらす」危険があると警告しています。

 報告は、特に先制攻撃を中心戦略として宣言することにより、米国は「国際法を無視してでも軍事力を使いたくてたまらない国だ」とのイメージを広げ、テロ撲滅に最も必要な国際協力の妨げになっていると述べています。

軍事費が増大

 また▽国際テロ組織アルカイダとのたたかいでの大きな成果は「情報面での国際協力や米国内での警察などの調査」によるものだった▽「対テロ戦争」の名で軍事費が大幅に増大したが、本土安全保障やテロ対策に関連する予算は増加分の三分の一にすぎず、他はテロと無関係だった―などの現実をついています。

 テロの根本原因に関して報告は、ブッシュ政権はアフガニスタンでタリバン政権打倒の軍事行動には熱心だったが、同国再建には乗り気でないと指摘。▽一九七九年のソ連のアフガン軍事介入後に米国が反政府勢力を軍事支援したものの、その後は放棄したのと「同じ過ちを繰り返している」▽その無策ぶりが同国でアルカイダが勢力を伸ばす状況を生んだ―とし、米国の長期戦略の欠如を批判しています。

原因除去提起

 「対テロ戦争」への対案として報告は、(1)外国での戦争でなく第一に米本土の安全を強化する(2)テロリストに責任を負わせる国際的・国内的法体系を強化する(3)国の内外で民主主義を守り促進する(4)テロを生む根本原因を除去する―ことを提起しています。

 (4)に関連して報告は、「ブッシュ政権がアルカイダのような国際テロによる脅威の本質を理解できていない」と指摘。「テロリズムは、ある政治目標を達成するための特殊な種類の暴力行為」なのだから、「一つのテロ行為がどんなに恐ろしいものであっても、それを超えて、国際テロを生む社会経済的・政治的・軍事的背景を探る必要がある」と述べています。

 テロの政治的土壌として、(1)抑圧的な政治体制(2)破たん国家(3)貧困と不平等(4)「抑圧的政権との同盟の利用も含めて世界支配の地位を制度化しようとする米国の努力」を列挙。これらの除去が求められるとしています。

 この報告は、マイケル・クレア教授ら二十三人の研究者からなるプロジェクトチームのもと、FPIF誌のジョン・ガーシュマン共同編集長らが執筆しました。



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