2004年9月17日(金)「しんぶん赤旗」
【ワシントン=遠藤誠二】国連のアナン事務総長は十五日、ブッシュ米政権が主導して開始したイラク侵略戦争を「国連憲章に照らして違法である」と批判しました。イラク戦争開戦後、同総長がこの戦争を「違法」だと明言したのは初めてです。
アナン事務総長は英BBC放送とのインタビューで、イラク戦争は「われわれ(国際社会)の観点からも、国連憲章上からも、違法なものである」と言明しました。さらに、「私はこれから先ずっと、国連の承認や国際社会の広範な支持のない、イラク型の作戦(戦争)が起きることを目にしたくない」とのべ、昨年三月に国連安保理の決議を経ないで始めたイラク侵攻は不法であるとともに国際社会の総意を得ていないという考えを改めて示しました。
同事務総長はイラク戦争開戦前の昨年三月十日、米国が安保理決議なしに軍事行動にでるなら、国連憲章に「合致しない」とのべ、昨年の国連総会では、ブッシュ政権の先制攻撃戦略を国連憲章の平和のルールへの「根本的挑戦」だと批判しています。
イラク戦争を違法だと開戦後初めて明言した今回の発言の背景には、米上院の委員会でのパウエル米国務長官の証言にみられるように、イラク戦争の口実とされた大量破壊兵器がイラクになかったことが確実となり、大義のない戦争であることが疑問の余地のない形で世界的に明らかになったことがあるとみられます。二十一日の国連総会一般討論での同総長の冒頭あいさつが注目されます。
アナン氏はまた、治安悪化が続くイラクの現状について、「治安状況が現状のままなら、信頼できる選挙は実現しない」とも語り、一月に予定されている選挙の実施に懸念を表明しました。