2004年9月17日(金)「しんぶん赤旗」
昨年四月に制度がスタートして以来、予算不足が深刻な問題となっている障害者支援費制度で、今年度の在宅サービスにたいする国庫補助金の不足額が、〇三年度の百二十八億円の二倍に相当する二百億―二百五十億円に及ぶことが、十六日までに厚労省の推計で分かりました。〇三年十月から〇四年五月までの利用実績をもとに、〇四年度に必要な補助金額を同省が試算したものです。戸苅利和事務次官は同日の会見で「二百数十億円を上回る可能性がある」とのべました。
不足分について同省は、十月からサービス単価の見直しなどで費用を抑制する一方、「財務省に補正予算などの措置を求めることを検討している」といいます。
支援費制度は、身体・知的障害者を対象に、障害者本人がサービスを提供する事業者と直接契約し、本人負担を除く費用を国と自治体が「支援費」として支給する制度です。厚労省は「障害者がサービスを自分で選べる」と宣伝。制度開始後、ホームヘルプを中心にサービスの利用は急増しました。
そのため初年度(〇三年度)から当初予算を百二十八億円も超過する事態となりました。ところが同省は、今年度も予算不足が見込まれていたにもかかわらず、当初予算で前年度より八十六億円増の六百二億円しか計上しませんでした。
支援費の予算不足が今年度も深刻な問題になることは当初から予想されていたことでした。事態を憂慮し、打開を求める切実な声にこたえず、欠陥予算を押しとおした厚生労働省の責任がきびしく問われます。
日本共産党は政府予算案確定前の昨年十一月、「来年度(〇四年度)予算でもサービス供給に支障が起きないよう必要な予算を確保すること」と坂口力厚生労働相あてに文書で事態の重大性を提起。予算案確定後は衆院予算委員会で山口富男議員が「サービスを賄える予算ではとてもない」「対応を至急とっていただきたい」(二月二十五日)とただしました。
これにたいし坂口厚労相は「少ない予算でより効率的な結果をお出しいただくように、都道府県にもお願いをしている」(同日)と答え、是正に動きませんでした。
年度の半分しかたたない時点で前年度の二倍にも及ぶ予算不足が明らかになったことは、この見通しがまったくいい加減だったことになります。
支援費制度は、民間の事業者と障害者との契約にもとづいてサービスを提供する制度で、財源が国、地方の公費負担にある点に違いはあるものの、介護保険に続く「福祉の構造改革」として厚生労働省が華々しく打ち出した仕組みです。「二十一世紀にふさわしい福祉サービスの利用制度」と意義づけて〇三年四月に発足させました。
ところが発足直後から予算不足が表面化。とくに、ヘルパーが障害者の自宅を訪問して、掃除、洗濯、食事づくりを手伝うホームヘルプサービスの利用予測を過小に見込んだため予算不足が深刻となりました。厚生労働省は、今年度のホームヘルプ予算(支援費分)として三百四十二億円を計上(前年度比13%増)したうえで、なお状況はきびしいと見込んで、サービス単価の切り下げや利用抑制策を実施して事態を切り抜けようとしました。これが完全に破たんしたため、補正予算を検討せざるをえない状況に追い込まれた形です。
二百五十億円という不足額は、四カ月から五カ月分もの支援費国負担(在宅分)に相当します。サービス提供に支障がでないよう政府はただちに対応する必要があります。
厚生労働省は、支援費の財源問題を解決するため、介護保険との統合を打ち出し、社会保障審議会(介護保険部会)で月内から論議を再開します。しかし、支援費との統合には利用者負担の増大や重度障害者などへサービス保障がどうなるかなど、多くの問題が残され、障害者団体の間でも意見が分かれています。
また介護保険見直しにあたって、サービスの利用をどう抑えて給付費を減らすのかが焦点となり、財務省側は利用者負担を現行の一割負担から二割、三割への引き上げを求めています。支援費の財源保障や、障害者の要望にそったサービス改善は、介護保険見直しの議論ではほとんど問題にもされていない状態です。
こうしたなかで介護保険との統合論議で結論を急ぐようなことがあってはなりません。
斉藤亜津紫記者