日本共産党

2004年9月17日(金)「しんぶん赤旗」

建設反対の世論に逆行

沖縄・辺野古沖

日米両政府が固執する新基地とは何か


 米軍ヘリ墜落事故に抗議し、三万人もの参加者が集まった沖縄・宜野湾市民大会は、米海兵隊・普天間基地を辺野古に移設するのではなく、ただちに返還することを求めました。それでも、日米両政府・県は、名護市辺野古沖への代替新鋭基地建設に固執し、ボーリング(掘削)調査を強行しています。政府が狙う基地建設計画とは、どんなものなのでしょうか。

無法な米出撃拠点 危険の「たらい回し」

地図

地図

 基地の規模は、長さ二千五百メートル、幅七百三十メートル。面積は護岸部分を含め二百七ヘクタールで、東京ドームの約四十四個分にあたります。一九九六年に県内への新基地建設を決めた沖縄に関する日米特別行動委員会(SACO(サコ))合意では、全長千五百メートル。一・七倍に巨大化した形です。

 普天間基地に配備されていたヘリ部隊は八月下旬、イラクへ出撃しています。同基地に配備され、八月十三日に沖縄国際大学(宜野湾市)で墜落したCH53D大型輸送ヘリも、イラクに出撃する予定でした。

 米国の無法な先制攻撃戦略を支える最新鋭の出撃拠点を辺野古に建設することは、平和を求める世界の願いに逆らうものであり、県民にとっては普天間基地の危険の「たらい回し」にすぎません。

 新基地は辺野古沖を埋め立てて建設する計画です。

 埋め立てに使う土砂は、約一千七百七十万立方メートル。東京ドームの容積の十四杯分にあたる膨大な量です。

 しかも、建設にあたって、建設予定海域北側に位置する大浦湾や、辺野古漁港の南側を、さらに埋め立てて、作業場とする考えも示しています。

 建設予定海域は、サンゴ礁が広がる海です。天然記念物の海洋ほ乳類ジュゴンの生息も確認されており、ジュゴンの生息を脅かす環境破壊につながることは明らかです。


サンゴ礁真上をボーリングする

 那覇防衛施設局が九日から強行しているボーリングは、新基地の護岸建設のための調査です。護岸工事は、埋め立て工事の前提となる工事で、ボーリング調査は、新基地の本体工事に直結するものです。

写真

ボーリング調査をおこなう那覇防衛施設局の調査船と抗議する監視船(中央)=10日、沖縄・辺野古沖

 政府は四月からボーリング調査を開始する計画でしたが、地元住民の座りこみの抗議によって強行できずにいました。米軍ヘリ墜落事故を受け、県民のなかで普天間基地の一刻も早い閉鎖・撤去を求める世論が強まりました。辺野古への新基地建設を急ぐ政府は、この県民世論を逆手にとって、ボーリング調査を強行した形です。

 しかし、防衛施設庁は、今後環境影響評価(アセスメント)に三年、県知事による公有水面の埋め立てについての許可の手続きに四―八カ月、建設工期に九年半かかると見込んでいます。普天間基地の危険を十数年も放置しながら、新たな危険を生みだすことになります。

 政府は、この工期の短縮をはかりたい考えですが、山中昭栄防衛施設庁長官は、波浪の影響で辺野古沖では年間三分の一しか工事ができないことや、地形が非常に複雑であることをあげ、「ウルトラCがあればいいが、そういうものでもない」(十日の会見)と大幅な短縮は困難であることを認めます。

 しかも、ボーリング調査とは、建設予定海域のサンゴ礁の真上六十三カ所を掘削し、地盤の強度のデータなどを収集するというもの。沖縄県が意見を聴取した専門家は、「ちょうど人間の心臓を刺してその影響を評価しようとするようなもので、サンゴ礁も人間も死んでしまうことはわかりきったこと」(琉球大学の山里清名誉教授)と厳しく批判しています。

 政府は、ボーリング調査と並行して、基地建設が自然環境に与える影響を調べる環境アセスの作業を進めています。ボーリング調査が、これだけ環境を破壊することが明白なのに同調査については環境アセスは対象外としています。

 県民の意思は明確です。世論調査では、名護市辺野古沖への基地建設反対に81%(沖縄タイムス)と圧倒的。辺野古沖に新基地を建設するのではなく、普天間基地は全面撤去以外にありません。


実効性に疑問 環境アセス

 政府が進めている新基地の環境アセスでは、調査・予測の手法などを記載した「方法書」を四月に公表しました。しかし、その方法書には、騒音予測や水質予測に必要となる航空機の種類については「米軍回転翼機、民航中型ジェット機等」と記すだけで、「(アセスの)実効性が疑問視される」(沖縄タイムス)との指摘もあがっています。

 六月に終了した方法書についての住民からの意見では環境アセスの方法だけでなく、基地建設そのものへの批判も集中。「軍事基地建設のための事業は反対」「沖縄の産業を支える観光に影響を及ぼすため反対」などの意見が出ています。

 今後、名護市などの関係六市町村からの意見をとりまとめる沖縄県から十一月末までに意見を聞いたのち、実際に調査に入る構えです。



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