2004年9月17日(金)「しんぶん赤旗」
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失業や倒産で収入が途絶え電気、ガス、水道の料金を滞納して供給を止められ餓死や自殺に追いこまれる悲惨な事件が後をたちません。東京都生活と健康を守る会連合会(都生連)は「電気、ガス、水道料金が延滞しても機械的に供給を止めないで」と低所得者の命を守る運動をすすめています。
「あと一歩で餓死。本人と一緒に区と交渉して水道、ガスが開通して助かった」。こう話すのは、東京・足立区の生活と健康を守る会の松木亀久夫さん(75)です。
昨年まで塗装業をしていた男性(58)が今年六月、松木さん宅にかけ込みました。「足に物が落ちてケガをした。仕事ができず収入がない。ガス、水道の料金は払えず、止められた。電気のコードで首をつったが、死に切れなかった」というのです。
驚いた松木さんは、男性の自宅に行きました。昼間なのに室内は暗く、ガラーンとしています。すぐ本人と一緒に福祉事務所に行き、生活保護を申請。病院にかかれる医療券と生活保護を受けられました。
松木さんは「昨年暮れから、この綾瀬地域で生活保護申請が六件になる」と話します。
東京都の監察医務院の調査によれば、二〇〇二年の餓死者は三十四人。一九九〇年と比べ二倍を超えます。この十年間に二百二十九人が亡くなっています。水道やガス、電気の滞納、供給停止の件数は多数です。
豊島区では七十七歳の母親と四十一歳の息子が餓死(九六年)、杉並区では老夫婦が餓死しました(〇一年)。都生連は“餓死者をなくそう”と、ライフラインの一方的な供給中止をやめるよう関係機関に働きかけ、交渉を続けました。
〇二年三月、日本共産党の緒方靖夫参院議員が、国会でこの問題を取り上げました。平沼赳夫経済産業相は「餓死事件は非常に痛ましく、あってはならない」「生活保護のはざまのなか、制度が動いていない場合がある」と答弁。
翌月、経産省資源エネルギー庁は「福祉部局との連携などにかかわる協力」依頼の文書を全国の電力、ガス事業者、農業協同組合に送付しました。
これに逆行するように、小泉内閣は生活保護の切り捨てなど、社会保障制度を改悪しようとしています。
五十年にわたり全国生活と健康を守る会連合会(全生連)の活動を続けてきた都生連会長の我伊野徳治さんはいいます。「憲法二五条は国民が人間らしく生活する権利を保障しています。しかし、低所得者が餓死する。こんな事態をなくすために社会保障を充実させる運動を大きく広げたい」
全生連は、こうした活動の交流と新たな前進をめざし、第三十五回大会を十七日から開きます。
矢藤実記者