2004年9月17日(金)「しんぶん赤旗」
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【ロンドン=西尾正哉】イギリスの労組全国組織である労働組合会議(TUC)のバーバー書記長は十三日から十六日にかけて開いた定期大会の初日、基調報告で、利潤追求を最優先する米国型の資本主義社会よりも、労働者の権利、福祉を重視する欧州型社会を発展させようと提唱しました。
書記長は、米国型社会について「特徴は規制緩和、流動的な雇用と首切り、最低限の社会福祉、長時間労働だ」と指摘。「うんざりするほどの富が一握りの人々に集まり、絶望的な貧困が多くの人にのしかかっている。社会が分断されている」と批判しました。
また、英国の労働運動が目指すべきものは「欧州で自分たちが発展させてきたモデルだ」とし、「確固とした社会福祉、社会的なパートナーシップ、市民、労働者としての権利の強固な枠組み」を強調しました。
他方、ロンドンに本部を置く経済政策研究センターのギジェルモ・デラデーサ理事長は英紙フィナンシャル・タイムズ十五日付に欧州型社会モデル維持の必要性を強調しながら、そのために改革が必要だとする論評を寄稿しました。同氏は著名な金融専門家で、米国系の投資銀行ゴールドマンサックス欧州本部副理事長も務めています。
同氏は、貧富の格差をあらわすジニ係数などをあげ、米国より欧州の方が格差が小さいと指摘。米国民の中に貧困層が17%いるのに対して欧州連合(EU)では9%にとどまっているとして、「米国の方が効率のいい経済なのは明らかだが、欧州はより平等だといえる」と評価しました。
その上で、「欧州型モデルが長期に持続できるかは不確かだ」とし、欧州が米国よりも生産性や就業率で劣っていることや高齢化、少子化が米国よりも欧州の方で進んでいる点を指摘し、「二〇五〇年までに欧州では国内総生産(GDP)に占める医療と年金の割合が米国より9―10%大きくなる」とのべました。
同氏は、欧州型社会を維持するためには「経済をより生産的にし、社会福祉体制をより効率的かつ負担の少ないものにすることが必要だ」と強調しました。