2004年9月19日(日)「しんぶん赤旗」
日本の良心を代表する九人が「憲法九条を輝かせよう!」とよびかけた「九条の会」の初めての地方講演となる大阪講演会が十八日、大阪市の中之島中央公会堂で開かれ、「九条の会」の井上ひさし、小田実、澤地久枝の三氏が講演しました。
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会場には開会の三時間前から列ができて千五百人の参加者であふれました。入りきれなかった人たち二千二百人も特設の屋外マイクのまわりに集まり、講演した三氏が開会直前にあいさつ。「互いに顔がみえるような形で集まることが力になると思います」(澤地氏)とあいさつすると、大きな歓声がわきおこるなど、講演者と参加者が一体となりました。
講演で井上氏は、憲法が古くなったから変えようとか、押し付けられた憲法だから変えようとかいう主張は全部「大うそ」と強調。日本国憲法は人間社会の根本のルール・永久の価値を定めており、九条は日本が取りまとめの役割を果たした一九二八年の不戦条約にも由来すると説明しました。「自然体でゆっくりと、ニコニコしながら頑張りましょう」という井上氏の話に、会場には笑顔があふれました。
小田氏は、一九四五年に自ら体験した三回の大阪空襲を振りかえり、戦争で殺されるのは民衆だと告発。二つの世界大戦や、ベトナム戦争にふれ、「この連鎖を断ち切らなければならない。九条は単に日本だけのものではなく世界全体の問題だ」と呼びかけると会場は大きな拍手に包まれました。
澤地氏は「今日は七十三年前の満州事変の記念日」と切りだし、戦前民衆が何も知らずに戦争にまき込まれていった歴史を振りかえりつつ、「今は私たちは主権者であり、九条を踏みにじる政治にきっぱりものをいう責任がある」と力説。「環境、飢餓などあらゆる問題は平和でなければ何もできない」との澤地氏の訴えに、「そうだ!」という掛け声、大きな拍手がわき起こりました。
「わかりやすく力強い講演者の話に元気が出た」――。講演会終了後の公会堂前では、参加者が口々に感動を語る様子がみられ、会場外の参加者の数をみた人からは「まるで安保闘争のときのようや」との声も出ていました。兵庫・宝塚市から参加した女性は(64)は「平和に少しでも貢献したいと思い生きてきた。この生き方をどれだけ貫けるか、そのために今日の講演会で力をもらった」と語りました。
「問い合わせの電話が連日あって、千人ぐらいはあふれるかなあと思っていましたが、二千人以上になるとは予想外です」とは「九条の会」発足記念大阪講演会を成功させる会事務局の話です。講演が始まる三十分前には、会場の中之島中央公会堂の隣の府立図書館を越えて、その隣の大阪市役所、さらに淀屋橋まで数百メートルにわたって、列が続いていました。
講演が始まってからも人の波は続き、あきらめて帰った人も少なくありません。成功させる会事務局では「講演会のことを『赤旗』で知ったという人のほか『九条の会』のホームページを見た、とか一般紙の報道で知って参加してきた人もいるのではないか」と話しています。