2004年9月20日(月)「しんぶん赤旗」
ブッシュ米大統領は十七日に遊説先のノースカロライナ州シャーロットで行った演説で、「フセイン(元イラク大統領)は大量破壊兵器を製造する能力があった」と強調し、前日のミネソタ州での演説に続いてイラク戦争を正当化する主張を繰り返しました。
演説はイラク戦争の違法性が国連事務総長からも指摘される中で、保有ではなく「能力」という新たな理屈に頼るしかないほどに、ブッシュ政権が窮地に立っていることを示しています。
ブッシュ氏は演説で、「私と議会が得た情報によると、フセインは大量破壊兵器をもっていた」とした上で、「見つかると思っていた(大量破壊兵器の)備蓄は発見できなかったが、フセインがそのような兵器を製造する能力をもち、その能力を敵に渡すことができたはずだ」と繰り返しました。そして、そのことで始めたイラク戦争は「国連安保理決議に基づく」ものだと主張しました。
パウエル国務長官は十三日に「いかなる(大量破壊兵器の)備蓄も見つかっておらず、将来も見つかりそうにない」と米議会で証言しましたが、ブッシュ氏は、そのうえで問題を製造「能力」にすりかえたのです。
しかし、イラク問題に関する安保理決議一四四一をはじめ他の決議にも、大量破壊兵器を製造する力があるかもしれないとの理由でイラクに軍事攻撃を行うことを認める文言などありません。
しかも、製造「能力」という主張が成り立たないことは、これまでの専門家の指摘ではっきりしています。
一九九一年から九八年まで国連大量破壊兵器廃棄特別委員会(UNSCOM)の主任査察官を務め、現地を熟知しているスコット・リッター氏は、二〇〇三年二月に本紙のインタビューで、国連の査察下でイラクが大量破壊兵器をほぼ廃棄したと、こう語っています。
「イラクは九六年までに保持していた90―95%の大量破壊兵器を破棄し、100%の大量破壊兵器工場や部品をつくっていた工場も破棄した。九四年から九八年までの調査でイラクが禁止されている武器の保有ないし、再び製造している証拠はなかった」
米イラク調査グループ(ISG)の前責任者、デビッド・ケイ氏は、今年二月、「九〇年代半ばに大量の貯蔵化学兵器はどこかで廃棄された」「九〇年代は大規模な化学兵器製造は行われなかった」と証言しています。さらに、九八年の米英軍による大規模空爆でかなりの施設が破壊されたとの見解も示していました。
イラク戦争前にイラク国内で査察した国際原子力機関(IAEA)のエルバラダイ事務局長は今年二月、イラクの核兵器開発計画について「戦争前にその証拠はなかった」と語っています。
ブッシュ大統領の主張の道理のなさは、今後国際的にも厳しく問われるでしょう。
中村美弥子記者