日本共産党

2004年9月21日(火)「しんぶん赤旗」

小泉首相

常任理事国入り国連総会で表明へ


軍事的な義務は不可避

 小泉純一郎首相は二十一日に国連総会で演説し、日本が安保理常任理事国入りの用意があることを表明する予定です。常任理事国になれば、国連の名の下での軍事活動で極めて大きな軍事的義務を負うのは不可避です。

 現行国連憲章では、国連の最大の任務である「国際の平和と安全」に主要な責任を負うのは、すべての加盟国からなる国連総会ではなく、十五カ国で構成される安保理(安全保障理事会)です。

 このうち十カ国は、一般の国から選挙で選ばれる非常任理事国であり、任期は二年です。これに対して、拒否権をもち、永続的に安保理構成国となり、平和と安全に責任を負い続けるのが常任理事国です。国連発足以来、米、英、仏、中、ロシアの五カ国が、この座を占め続けています。

 しかも常任理事国は、国連軍の「戦略的指導」に責任を負う軍事参謀委員会に参謀総長などを出すよう義務づけられています。常任理事国は率先して兵力を提供するとの一九四七年の合意もあります。

 これまでに国連軍が結成されたことはなく、軍事参謀委員会も定期開催されてはいますが開店休業状態にあります。とはいえ軍事参謀委員会の規定は、国連の名での軍事行動に常任理事国が主要な責任を負うという点に眼目があります。

 小泉首相は、「憲法と両立する範囲内で常任理事国になる」と表明すると伝えられています。しかし、戦争放棄と軍隊不保持をうたう憲法の擁護は、常任理事国入りと両立しません。

 五十一カ国で発足した国連は、植民地解放という戦後世界の大きな変化を反映して今日、加盟国百九十一にまで拡大しました。ところが、常任理事国の構成は、今日の国連全体や世界を適切に反映していないとの強い批判が起こっています。

 そこで国連では一九九三年以来、安保理改革の議論が続いています。しかし、常任理事国の特権を保持したい米国の抵抗など、各国の利害が対立し、合意形成に至っていません。

 憲法の平和原則をもつ日本は、武力行使の禁止や国際紛争の平和的解決の義務など国連憲章に示された世界の平和秩序を発展させる立場から、また主権平等の原則に基づき国連総会の役割を強化するなど国際社会の民主化を促進する立場から、この議論に臨むことが求められています。 坂口明記者

改憲狙い米国が後押し

 常任理事国入りという日本政府の目標は、村山内閣の河野洋平外相が一九九四年の国連総会の演説で正式表明して以来、一貫して掲げられてきました。昨年の総会でも川口順子外相は「改革された安保理の中で常任理事国として、かかる責任をいっそう積極的に果たしたい」と表明しました。

 それでも今回、小泉首相が改めて常任理事国入りを表明することには特別に重大な意味があります。首相は憲法九条改悪を明言、自民党に改憲案策定を指示するなど、これまでの政権が踏み込めなかったことに乗り出そうとしているからです。

 この間、米政府高官が相次いで、改憲と結びつけた日本の常任理事国入り支持を表明しています。七月にはアーミテージ国務副長官が「常任理事国は国際的利益のために軍事力を展開しなければならない役割がある」と発言。八月にはパウエル国務長官が「日本が安保理の完全なメンバーとしての義務を負うのであれば、その観点から憲法九条を再検討する必要がある」と述べました。

 ここには、改憲と常任理事国入りによって、日本にいっそうの軍事的役割を果たさせようという米側の思惑があからさまに示されています。

 政府・与党内には、イラク問題をめぐる国連での議論に、日本が十分に“参加”できなかったとの思い込みもあります。ある外務省幹部は、イラクへの多国籍軍派兵をめぐり「国連分担金を二割も拠出していながら、日本は間接的な発言しかできなかった」(「毎日」八月二十四日付)と述べています。自民党の安倍晋三幹事長は九日、「(国連に)高い分担金を払っている以上、安保理での地位を求めるのは当然だ」と講演しています。

 しかし、イラク戦争に至る過程で日本が行ったことは、米英などが提案した武力行使容認決議案への支持を他の安保理理事国に働きかけることでした。常任理事国入りすれば、その“発言力”で米国のお先棒かつぎにいっそう奔走するだけです。

 政府は、日本が二〇〇五年一月から二年間の任期で安保理非常任理事国を務める機会に「国連改革」を強調し、常任理事国入りの環境づくりをもくろんでいます。しかし、米国に付き従って世界的規模の軍事的役割を果たすことと結びついた常任理事国入りは、国際社会にとって有害なものでしかありません。山崎伸治記者



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