2004年9月22日(水)「しんぶん赤旗」
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教育基本法の改悪案が来年一月の通常国会にも提出されようとしています。政府の決めた教育内容を教育現場に押しつけ、「国を愛する」ことを教育の目的とする改悪は絶対に許せないと、全教(全日本教職員組合)をはじめ、全国でとりくみがすすんでいます。内野健太郎記者
「『教育基本法の問題で一回集まりをもたへんか』と話すと、『なんとかせなあかんな』『声をかけてくれて、うれしいわ』とどんどん話が広がっていった」―。大阪府北部の高槻市の全教組合員、下村ゑい子さん(54)が振り返ります。
高槻市では、教職員組合の違いを超え、下村さんら女性教職員の有志七人が呼びかけて四日、講演会「どうなるの? この国の教育。子どもたちの未来は」を開きました。講演会への賛同を呼びかけたところ、全教組合員も日教組(連合加盟)の組合員もさまざまな市民団体のメンバーも次々と賛同し、人材育成コンサルタントの辛淑玉さんを講師に迎えた当日の講演会には、百五十人が集まりました。
「いまでも差別と競争の教育がどんどんすすんでいるのに、教育基本法が改悪されたらどうなるの、『教え子を再び戦場に送らない』という私たちの願いもふみにじられるんとちゃう(違う)って話せば、みんな『そやねえ』と共感してくれます。その気持ちを表す場がいままでなかった。集まれば、自分たちだけやないとわかり、元気がでた」と下村さん。
幅広い多彩な運動が各地で始まっています。東京・南多摩地域では、都教組南多摩支部の組合員が中心になり、憲法・教育基本法改悪に反対する市民と教職員の連名アピールにとりくみ、三千人の賛同を集めようと意気込んでいます。
憲法改悪阻止を掲げた“九の日宣伝”が全国いっせいに実施された九日。東京や京都では、全教加盟の組合員が街頭で訴えました。京教組は、独自に十九日、二十九日を“九の日宣伝”にして運動を盛り上げていこうと、とりくんでいます。
和歌山では、和教組や和高教も参加する「教育基本法をまもる和歌山県連絡会」の活動を県内に広げようと学習会を開催し、百人が参加。商業新聞四紙の和歌山県版の三分の一の紙面を買い取って、改悪反対を訴える意見広告を掲載しようと賛同者を広げています。
大阪では、大教組や大阪労連、民主法律協会などの共催で十月六日に開く「教育基本法の改悪を許さず、平和と子どもを守る市民集会」を成功させ、共同を広げようと準備をすすめています。
香川県では、香教組を中心に九月末からスタートする“自治体キャラバン”で、三十人以下学級の実現と教育基本法「改正」法案を上程しないよう求める意見書の採択を要請して県内をくまなく回って行動します。昨年のキャラバンでは、「教育基本法は日本の教育にとって命」「教育基本法は大事にしないといけない」との声が自治体首長から寄せられました。
日教組や学者・文化人が呼びかけた教育基本法改悪ストップ! 実行委員会は十八日、東京都内で「9・18全国集会」を開き、全国から約二千五百人が集まりました。
国立大学財務・経営センター名誉教授の市川昭午氏が、どのような改悪が狙われているかを特別報告。歌やコントを交えて、ジャーナリストの斎藤貴男、作家の朴慶南、哲学者の高橋哲哉(東京大学)三氏が「愛国心」と「伝統文化」の二つのテーマで討論しました。
「福岡市の小学校の通知表で、『国を愛する心情』を評価したが、在日韓国・朝鮮人はどう評価されるのか。愛国心は排外的なものに結びついていく」(朴さん)、「私が日本は民主主義であってほしいと思うのも愛国心であるかもしれない。愛国心は国家や公教育で強制されるものでない」(高橋さん)、「愛国心とはそこはかとなくあるもので、政権を担う人に押し付けられるものではない」(斎藤さん)と意見を交わしました。集会後、風船やのぼり旗を手に、JR東京駅までデモ行進しました。