2004年9月25日(土)「しんぶん赤旗」
「九条の会」がはじめて開いた十八日の地方講演会。会場の大阪市・中之島中央公会堂は屋外を含め四千人近い参加者であふれました。そこには「憲法を守ろう」との参加者一人ひとりの熱い思いがありました。世代を超え、地域・職場の違いを超え、憲法を守ろうという草の根の広がりを大阪にみました。
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「九条の会」講演会場に一番乗り |
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この日、大阪は強い日差しが照りつけました。中央公会堂には午後二時の講演会開演を待つ人の列ができました。
一番乗りした豊中市の仲博子さん(56)は午前十一時前に到着。「どうしても生で聞きたい講演会だから早く来ました」と明るい顔で語ります。「戦後日本が海外に軍隊を出し人殺しをしなかったのは九条のおかげです。立派な九条を守っていくには、妻、母、女が絶対必要。四人の子どもを持つ母親として子どもの命を守りたい一心です」
仲さんは職場(商社)の新日本婦人の会の活動を通じて、憲法の全条文を何度も読む学習会に参加し感想を述べ合いました。三十日に、記録映画「教えられなかった戦争―沖縄篇」のビデオ上映会を職場で行います。
仲さんは言います。「若い人を巻き込んで運動を大きくしていくには自分の言葉で話すこと。それには学習が必要です。選挙にも行かない若い世代の人たちも、イラクで大勢の人が亡くなっている事実を知ると涙を流す感性を持っているのです」
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千人アピールで幅広い働きかけ |
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和歌山県と奈良県に接し、大阪府東南部に位置する河内長野市。人口約十二万人の住宅都市で、人口が急増しています。
五月三日に結成された「河内長野市9条を守る会」は、「憲法9条を世界に生かす千人アピール」運動を展開。アピール賛同者の名前入りのビラ五万枚を市全域に新聞折り込みをする計画をたて、賛同者を募る活動にとりくんでいます。十七日の会議では、賛同者がすでに千人を超え、カンパも目標額を大きく上回る四十万円近くが寄せられたことが報告されました。政治的立場を超えて幅広い働きかけを強め、元市医師会長の賛同や、天理教分教会の協力も得られました。
運動に積極的に取り組む日本共産党の吉田礼子市議(52)は言います。「この運動は、名前は出せなくても憲法改悪を押しとどめる力を確実に広げていると思います」
会議終了後の夜も、吉田市議は軽自動車を運転して地元の著名人宅へ賛同の要請に回りました。
会代表の藤原誠さん(77)は静かに語ります。「私は長兄が戦死し、次兄が広島で被爆。叔父も航空兵で戦死しました。私の一年上の学年は半数が戦死しているのです。戦争の被害者が現存している今こそ、平和憲法を守るために頑張らねばと思います」。警察官を経て裁判所の職員を務めた藤原さんは、定年退職後、保護司をしています。「憲法を新鮮な気持ちで学んだ若き日を思い出します。今、一人ひとりにとってなぜ憲法が大切なのか、よく考えなくてはいけません」
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宮本たけしさん招き学習会開く |
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近くに有名な「仁徳天皇稜」があるJR阪和線百舌鳥(もず)駅。そこに程近い日本民主青年同盟の事務所で十九日、高校班の学習会が開かれました。日本共産党の宮本たけし前参院議員が、ギターを手に自作のフォークソングを歌ったあと講演。イラクに大量破壊兵器はなかったことを認めたパウエル証言などを紹介して、「戦争の大義」が大うそだったことなどをわかりやすく話しました。
「軍事費を減らし教育費を充実させると、学校生活はどうなりますか?」「どうしたら武器をなくせますか?」――。高校生の素朴な質問が続きました。
A君が通う高校では文化祭で憲法九条をテーマにしたクラス展示を企画。五月にアレン・ネルソン氏(元米海兵隊員)を招いて講演会を開き、軍隊のない国コスタリカについての学習もしました。
府立高校一年生のB君は言います。「高校生で平和や憲法の問題について関心を持っている人はすごく少ないです。授業でほとんど取り上げないので学ぶ機会がないのです。関心がないように育てられているのです。だから、時間をかけてじっくり勉強していくことがとても大切だと思います」
高校班では、イラク戦争反対や戦争協力拒否宣言の署名活動にとりくみ、十九日は駅頭で宣伝に立ちました。はじめてマイクを握り「声を出すのが恥ずかしかった」というC君。クラスメートが通りかかり「へぇー、こんなことやってるんだ」と感心していたといいます。八月に原水爆禁止世界大会に参加し民青同盟員と知り合い加盟したというD君は言います。「友達と平和の話をすると、最初は『重い話は嫌や』とかわされてしまうんです。でも、次第に関心を持ってくるようになりました」
府立高校に通うE君は言います。「九条が改悪され徴兵制になったら兵隊にさせられ人殺しせなあかん。そんなん絶対嫌や!」
小山田春樹記者