2004年9月25日(土)「しんぶん赤旗」
〈問い〉 憲法裁判所の設置を、自民、民主両党が主張していますが、憲法裁判所とはどういうもので、どんな問題があるのですか?(広島・一読者)
〈答え〉 憲法裁判所というのはドイツなどヨーロッパの一部の国にある制度です。わが国の最高裁判所とはちがって、法律が憲法に適合しているかどうかを直接に判断する役割を果たす制度です。
日本の裁判所は、法律などが憲法に反しているかどうかの判断を具体的事件の裁判をつうじておこなう仕組みで、その最終判断は最高裁判所がおこなうことになっています(憲法第八一条)。
でも実際には、憲法違反の判断をすることが極めて少なく、明確に違憲と思われる事項についてすら「統治行為論」などといって判断をさけており(自衛隊の存在の違憲性について、いまだに判断をしていないのがその典型)、政府・行政機関の行為を事実上容認する役割を果たしています。
自民党などは、違憲判断がすすまないのは、直接憲法判断をする仕組みがないからだと、憲法裁判所の導入を主張しています。
しかし、違憲判断がすすまないのは、政府が最高裁判所裁判官の任命で政治的な対応をおこない、その最高裁が全裁判官を統制する「司法官僚制」の体制があることなどに原因があります。
その結果、最高裁判所が前述のような行政追随の判決をくりかえすなど、しているのです。つまり、運用上の問題が原因であって、現憲法に欠陥があるのではありません。
憲法判断を憲法裁判所の裁判官だけに任せれば、政権政党がコントロールをしやすくなります。この条項を設けようという改憲派の意図は、国民を違憲審査から切り離し、政府・与党の出す法律にたいして、速やかに合憲判決を出させて、国会での論議や国民の批判を封じることによって、かれらのたくらむ悪政をいっそうすすめやすくするところにあります。(明)
〔2004・9・25(土)〕