日本共産党

2004年9月26日(日)「しんぶん赤旗」

ヘリ訓練 住宅地が標的だった

操縦士が見える低空飛行 米軍普天間基地


 八月十三日に米軍の大型輸送ヘリCH53Dが沖縄国際大学に墜落した事件は、八万八千人が密集して生活する宜野湾市のど真ん中に、普天間基地があることの恐ろしさをまざまざとしめしました。米軍ヘリの飛行実態を聞き取り調査してみると、宜野湾市街地を標的に飛行訓練していたことがうきぼりになりました。もともと「世界一危険」な普天間基地ですが、三年前にアメリカが開始したアフガニスタン攻撃や昨年来のイラク侵略、あるいは米軍の海外基地閉鎖などともむすびついていっそう危険性をつよめています。

 山崎静雄記者



図

 普天間基地から離陸するヘリは、以前は主として北部訓練場でさまざまな訓練をおこなったり、米軍機の低空飛行で問題となっている広島の山あいで低空飛行していましたが、この数年は市街地上空をところかまわず飛行するのが目撃されるようになっています。

 普天間基地監視ボランティアが今年二月二十七日から三月三十一日にわたって米軍機の飛行経路を調査した結果がそれを裏付けました。この基地監視ボランティアは伊波洋一市政が市民から募集したもので、現在百二十三人が活動しています。

 図は市街地全域がヘリの飛行経路にされていることをしめしています。CH53Dは調査当時は岩国から移駐してきておらず、基地所属のCH53E(D型の改良型)、CH46E中型輸送ヘリ、AH1J軽攻撃ヘリなどが中心でした。八年ほど前までは東側(太平洋側)が飛行コースとなっていましたが、米軍が一方的に西側(東シナ海側)も飛行コースにして、ヘリはいたるところを飛行するようになりました。

 市当局によると、夜間飛行訓練もなくならないどころか逆に増加、「子どもが寝つけない」「テレビの音がきこえない」という苦情が市に殺到しています。

 市街地戦争であるアフガニスタンやイラクでの活動を想定したような市街地上空でのはげしい飛行訓練になっていることがわかります。

グラフ

騒音被害激増

 飛行回数も激増しています。グラフは、宜野湾市発行の『メッセージ フロム ギノワン』二〇〇四年版にしめされている宜野湾市の一日平均の騒音発生回数です。基地南西部の上大謝名(うえおおじゃな)、北東部の野嵩(のだけ)、北部の新城(あらぐすく)の三カ所で測定されたものです。

 〇一年までの数字と比べると、新城での発生回数が著しく増え、〇三年は上大謝名でも、新城でも激増しています。

 三カ所の騒音発生回数は、同一飛行をそれぞれがカウントしている可能性もありますから合計が必ずしも飛行回数総数とはいえませんが、飛行回数増加をしめしていることはたしかです。伊波市長は「一日何百回となく飛行訓練している」とのべています。

 この飛行回数の激増は米軍の地球的規模での戦争と関係があると関係者は語ります。とくに、〇三年の激増ぶりはイラク戦争に備えた動きのあらわれです。〇四年の測定値はまだ公表されていませんが、多くの人が、墜落事故以前はたいへんな数だったといっています。

 今年四月ごろには、基地所属のヘリのほとんどがアフガニスタンやイラクなどに展開したとみられ、姿を消しました。その穴埋めのように、〇二年にテロ作戦用だとして岩国基地に配備されたCH53Dが普天間に展開。旧型で事故の危険性が高いといわれているこのヘリが激しい飛行訓練をくりかえし、その一機が墜落したのです。イラク戦争への参加のためでした。

 米軍は事故原因の究明もないまま六機をイラクに派遣、現在E型をふくめ五機が残っています。

編隊で飛行も

写真
墜落事故後、飛行を再開した米軍ヘリ。手前は普天間第二小学校

 さらにヘリの超低空飛行が最近ではいっそうひどくなっており、市民の恐怖は深刻さをましています。

 滑走路南東部側の宜野湾に住む知念吉男さん(日本共産党宜野湾市議)は「米軍ヘリが、私の家の前にある五階建てマンションの上を右へ旋回しながら飛ぶときは、パイロットの顔が識別できるのです」といいます。さらに市街地上空を編隊で飛行するのも最近の特徴だと指摘しています。

 滑走路北東部の野嵩に住む、普天間基地爆音訴訟幹事である知念忠二さんは、「CH46Eが自宅前を右旋回するとき、横のドアが開いているのが見え、なにか落ちてくるのではないかと心配になる」といいます。

 ヘリは市街地の上空を超低空で旋回飛行しては基地にもどり、そこでホバリング(空中静止)やロー・パス(低高度飛行)の訓練をしてから、再び市街地上空を飛ぶという飛行訓練を六―七回くりかえす。目撃者の話を総合すると、このような実態がうかびあがってきます。

 輸送ヘリは市街地で戦闘している地上部隊への物資投下や兵員の輸送、負傷兵の搬送など幅広い任務を果たしますが、それには超低空での飛行が不可欠です。知念忠二さんによると、AH1J攻撃ヘリによる地上攻撃訓練もおこなわれています。宜野湾での飛行訓練が、イラクなどでの市街地戦に備えた訓練であることはあきらかです。

 「普天間基地のヘリは、宜野湾市街地を戦場に見たてて、住宅地域を標的に訓練している」と怒りの声が大きくなってます。

 普天間基地のすべての航空機の飛行中止と基地の即時閉鎖、早期基地返還は宜野湾市民にとって緊急の問題なのです。



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