2004年9月29日(水)「しんぶん赤旗」
町村信孝外相は二十八日の発言で、いまの日中関係の停滞の原因が小泉首相の靖国神社参拝にあることを認めながら、それを擁護し、逆に中国側が「むきになっている」などとその責任が中国側にあるかのようにのべました。
町村氏自身、「国のために戦い、命をささげた人々を祭っている神社を参拝するのは人間として当然」(北海道新聞二〇〇一年十月二十三日付)と公言。毎年のように靖国神社へ参拝、ないしは代理が参拝してきました。神道政治連盟国会議員懇談会の副会長も務めています。同連盟は七月の参院選前に「靖国神社問題」や「憲法改正」などに「深甚なる考慮」を払うよう求めた要望書を自民党に提出しています。つまり靖国神社参拝を当然視する発言は、確信犯なのです。
小泉首相は今回の内閣改造で、首相や閣僚の靖国神社参拝は当然と公言する人物をわざわざ外相に任命したことになります。自らの靖国参拝で行き詰まっている日中関係をいっそう悪化させるようなことをやって恥じない、幾重にも罪は重いといわねばなりません。
町村氏は「それぞれの国にはそれぞれの慰霊の仕方がある」と儀礼・習慣の問題にすりかえる小泉首相と同じ議論を繰り返しますが、そうではありません。
靖国神社はもともと“天皇のために”戦死した軍人・軍属をまつる神社です。町村氏は「(日本では)亡くなられた方はすべて神だ」といいましたが、同じ戦争犠牲者でも、西南戦争で戦死した西郷隆盛や大空襲で犠牲となった国民はまつられないのが靖国神社です。戦前には侵略戦争推進の精神的な支柱とされました。そこにA級戦犯を合祀(ごうし)することは、侵略戦争美化にほかなりません。
日本の過去の侵略戦争を推し進めた当事者を“神”としてまつるような神社に参拝することは、侵略戦争そのものを容認することにつながり、それが日本の侵略を受けたアジア諸国の人々にとって受け入れがたいことは明らかです。首相や閣僚の参拝は単なる儀礼ではすまされません。歴史にかかわる重大な問題なのです。
町村氏が副会長を務める日中友好議員連盟は五月の訪中で胡錦濤国家主席、唐家〓国務委員らと会談。町村氏のホームページには、胡氏が「両国指導者は、歴史を鏡とし、未来に向けて努力する必要あり。その際、両国人民を傷つけない配慮が必要」とのべたと書かれています。
つまり町村氏は、過去の日本による侵略の歴史を顧みない小泉首相の態度を指摘する中国側の言明を直接ききながら、それを踏みにじる発言をしたことになります。
山崎伸治記者