2004年9月29日(水)「しんぶん赤旗」
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ベイルートで開催された反戦のための「国際戦略会議」(十七―十九日)は、イラク人の占領に対する抵抗の権利を支持し、米軍を中心にした多国籍軍の無条件撤退を要求、そのための国際的な活動を強化することを決定しました。イラクでは現在、米軍による攻撃の中で自爆事件が続き、暴力と混乱の連鎖がなお継続、来年一月に予定されている国民議会総選挙も一部地域では実施できない状況にあります。会議にはイラクからも二十人以上が参加しました。バグダッドからバスで二十時間以上かけて参加したイラク人に同国の現状と占領終結にむけたたたかいの決意を聞きました。(ベイルート=小泉大介 写真も)
ブッシュ米大統領は「イラクは自由と民主主義の国になった」などと繰り返していますが、イラク国民でこの言葉を信じている人間など一人もいないと断言できます。
イラク国民はやむことのない米軍の攻撃に加え、自爆テロの激化に苦しみつづけています。いまでも、誰かがやむを得ず外出すると、その家族はもう二度と再会できないかもしれないと覚悟を決めなければならないような状況です。こんな自由があるでしょうか。
経済の状況も深刻で、イラク人の失業率は80%に達しています。米国は「イラク復興」を口にしますが、「復興」しているのは米軍基地やそれに関連する施設ばかりで、イラク人の生活の復興は無きに等しい。石油輸出の利益もいったいどこに流れているのか誰にもわかりません。
私たちは確かに、旧政権下でフセイン大統領の独裁に苦しめられました。しかし、少なくとも治安に関してみれば何も問題はありませんでした。米軍による戦争と占領がなければ、いまも安全な生活を送っていたことは間違いないのです。
イラク人の怒りは米軍の軍事作戦に協力する暫定政府にも向けられています。大多数の国民が、同政府が国民のためでなく、米国のために存在していると考えています。政府の閣僚たちはそのことを承知の上で米国のために働いています。彼らは米軍の保護がなければ街も歩けません。もしそうでなければすぐさまイラク人によって殺害されるでしょう。暫定政府はそのような存在です。
暫定政府は来年一月までに直接選挙を実施するというスケジュールを順守するといっています。確かに選挙をでっちあげることはできます。しかし、現在、米軍が激しく攻撃を行っている中部のスンニ派地域ではまともな選挙などできるわけがありません。結局は米国のために働く暫定政府が実権を握り続け、それが新たなイラクの混乱を拡大するということになるでしょう。
イラクの国民の多くは占領に激しく抵抗しています。スンニ派はとくにそうですが、フセイン政権下で弾圧されたシーア派住民も七割は占領を強硬に拒否しており、米軍を追い出すためにスンニ派と協力することもいとわない人々です。
このような状況下、日本の自衛隊をめぐる状況も日増しに危険度を増しています。自衛隊が最初にイラクに足を踏み入れた当時は、抵抗運動はまだ弱いものでした。しかし、とくにこの三カ月で抵抗勢力ははるかに組織化され、力を増しているのです。これまで死者が出ていないのは単なる幸運でしかありません。
日本政府は間違いを犯しました。イラク国民は民間の復興支援は望んでも、軍隊の存在は拒絶しているのです。重大なのは、イラク国民がこれまで、ヒロシマ・ナガサキの悲劇を経験した日本は米国と反対の立場を取るものと思ってきたのに、今回、イラクでそれと反対の道を選択したことです。自衛隊に対する攻撃はいつ発生してもおかしくありません。