日本共産党

2004年9月30日(木)「しんぶん赤旗」

タカ派発言次つぎ新閣僚 なぜ

識者はこう見る


 小泉改造内閣の新閣僚から靖国神社参拝や改憲などをめぐってタカ派発言がポンポン飛び出しています。小泉首相のもとでなぜ暴論が相次ぐのか、その背景は――。


町村外相

首相として英霊に誓う行為は 当然のことだ(靖国神社参拝で)

常任理事国になったときに紛れの ない形の憲法にしておいた方がいい



■改憲集団の地金が見えた

写真

組閣後、記念撮影をする小泉内閣新閣僚

 町村信孝外相は「日本国首相として英霊に誓うのは当然のことだ」と小泉純一郎首相の靖国神社参拝を当然視しました。中山成彬文部科学相からは「愛国心」発言が。大野功統防衛庁長官は「イラク戦争は正当だ」と居直り、憲法違反の集団的自衛権行使をできるように「(憲法の)きちんとした解釈を」と注文をつけました。

 次々噴き出すタカ派発言について、政治研究者の江藤俊介氏はこう指摘します。

 「改造内閣は森派と山崎派が中心。派の系譜をみても、森派は改憲・タカ派の岸・福田・安倍派、山崎派は中曽根派の流れをくんでいる。田中・竹下派の流れの小渕内閣から森内閣に代わったときに、自民党の主流派は入れ替わった。ここにきてその地金がはっきり出てきた」

 小泉首相は、今回の改造人事で自身の出身派閥森派から五人も起用。山崎派からは派閥領袖の山崎拓前副総裁を落選中にもかかわらず首相補佐官に登用し、その側近である武部勤前農水相を党の要の幹事長に据えるなど重用しました。

 暴言の主は、町村外相と中山文部科学相が森派、大野防衛庁長官が山崎派です。

 江藤氏は、「小泉首相は“踏み絵”を踏ませて自身の路線、政策と合致する人、自分の身内で固めた。だから、改造内閣には親米タカ派の右に切るハンドルしかないし、アクセルばかりでブレーキもない。国民にとってはとんでもない、ほんとに危なっかしい内閣だ」と批判します。

大野防衛庁長官

集団的自衛権を行使できるように きちんと解釈を明らかにしてもらいたい

正当性はあると思う(イラク戦争の大義を問われ)



■“2大政党”の流れで加速

 「この問題は、平和を強く望んでいる韓国や中国などアジア近隣諸国を全部敵にまわすことになる。それは日本の国益を損ねることにもなる。日本の新聞は、なぜ今回の問題をとりあげ、批判しないのか」

 こう憤るのはジャーナリストの木内宏さん。日本の侵略戦争を史実に基づいて検証し、いまの日本外交を批判した海外メディア特派員の記事を読むと、その気持ちがさらに強くなるといいます。

 自民党は結党五十年の二〇〇五年秋までに改憲草案をまとめるとしています。新綱領原案にも憲法改定、教育基本法改定を明記しました。木内さんは「自民党は今後の日本を、右寄りで好戦的な方向に向かわせる戦略をとっているのが特徴だ。これで世論を引きつけ、保守層の票と自らの支持基盤を固めようとしているのかもしれない」。

 ある自民党幹部は、「民主党にすり寄ってこられるんだ。違うというところをみせないといけない」と語ります。“二大政党制づくり”の中で、よりタカ派の路線を競いあっているのです。(別項で民主党幹部の発言

 木内氏は相次ぐ暴言の背景について指摘します。「連立を組む公明党は政権維持で自民党と一体になっている。さらに野党の民主党も基本路線では自民党と何ら変わらない。この新たな政党状況も暴言を許す基盤になっている」

中山文科相

私は「愛国心」でいいと個人的に思っている(教育基本法改悪で)



■日本の在り方変える狙い

 憲法学の小林武愛知大学法科大学院教授は「二つ問題がある」として、第一に、「内閣をあげて改憲の作業に乗り出してきたということ」をあげました。

 「もう一つ、見なくてはならないのは、改憲が“独立した課題”として狙われているものではないということだ」として小林教授は次のように指摘します。

 「今回の閣僚の発言をみてもそうだが、自衛隊の海外派兵態勢づくりにしても、有事法制の具体化にしても、靖国参拝、愛国心を強調した教育基本法の改定にしても、いずれも国家の基本問題だ。この四つの基本問題に全面的に取り組む、それはまさに日本の国の在り方を変えてしまうということであり、その中心テーマとして、改憲が狙われている。小泉改造内閣の閣僚の一連の発言は、そのことを示している」


■民主党幹部は…

 ■岡田克也代表 「憲法を改正して国連安保理の明確な決議がある場合に、日本の海外における武力行使を可能にし、世界の平和維持に日本も積極的に貢献すべきとの立場に立つ」(7月29日、米国での講演)

 ■小沢一郎・前代表代行 「むしろ憲法の理念に従って、国連の平和維持活動には軍事面であれなんであれ、積極的に関わっていくべきです」(『現代』2月号)

 ■鳩山由紀夫・「次の内閣」外相 「(改憲試案で)まず、『自衛軍』の創設を宣言し、自衛隊は軍隊ではないという詭弁(きべん)をはっきりと排除する」(『文芸春秋』5月号)

 ■前原誠司・「次の内閣」防衛庁長官 「憲法を改正して、9条というものに自衛権を明記して…集団的自衛権の問題もブレークスルー(突破)しなければならない」(03年11月20日、日米安全保障戦略会議)

 ■西村真悟衆院議員 「お国のために命を投げ出してもかまわない日本人を生み出す」(6月11日、教育基本法改正促進委員会設立総会)



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