2004年10月2日(土)「しんぶん赤旗」
国連安全保障理事会(安保理)常任理事国入りを目指す小泉政権は、日本の常任理事国入りに向けて国際的に機運が熟しているかのような宣伝をしています。しかし、九月二十一日からの国連総会一般討論では、常任理事国拡大をめぐり各国の意見が大きく分かれていることが示されています。
坂口明記者
今年の国連総会では、日本のほか、ドイツ、インド、ブラジルが常任理事国入りの立候補宣言をしています。特徴的なのは、立候補国の近隣諸国が、常任理事国拡大に反対または不賛成の態度を示していることです。
ドイツ周辺のスイスやイタリア、スペイン、インド隣国のパキスタン、日本に隣接する韓国と中国、ブラジル隣国のアルゼンチンなどです。
パキスタンのムシャラフ大統領は、「常任理事国になりたいとの少数の国の野望について、合意はできていない。圧倒的多数の国は、新たな特権センターができることに反対している」と演説。特権的地位の常任理事国の拡大には「圧倒的多数の国」が反対していると明言しました。
イタリアのフラティニ外相は、「一部の国」が「新たな常任理事国の追加を自分たちのために主張」しているが、それは「対立や不満、おそらくは離反の種をまく」だけだと批判。非常任理事国の拡大を主張しています。(両氏の演説関連部分は9月25日付6面に掲載)
スペインのサパテロ首相は「拒否権行使と非常任理事国拡大についてのコンセンサス形成」を検討する用意があると表明。スイスのダイス大統領は「拒否権をもった(常任理事国の)新議席に反対する」と述べました。
韓国の潘外交通商相も非常任理事国の拡大を支持。中国の李外相は安保理で発展途上国の議席を拡大するよう主張しています。アルゼンチンのキルチネル大統領やメキシコのデルベス外相は、「現存する特権を拡大」しない改革を支持するとしています。(6面に四カ国代表の演説要旨)
日本が常任理事国入りするには、現行の国連憲章を改定する必要があります。
それには、国連加盟国の三分の二が賛成した上で、現在の常任理事国五カ国を含む三分の二の国が批准しなければなりません。常任理事国の態度が決定的です。
国連総会演説では、英国とフランスが、日本の名も挙げて常任理事国拡大に賛成しました。
日本政府にとって衝撃的だったのは、肝心のブッシュ米大統領が、常任理事国拡大問題に触れなかったことです。大統領再選をめざす同氏にとって、これまで軽視、無視してきた国連の改革など、票にならないとみたのでしょう。
ロシアのラブロフ外相は、「諸国の対立の原因とならない」国連改革をと主張しました。
国連改革を主張する国は多数ありますが、多くの国が、常任理事国を何カ国増やすといった数の問題より、改革で何を目指すのかの理念を重視しています。
ペルーのトレド大統領は、国連改革では「継続と変化の均衡を図る」べきだと主張。「道具、機構、措置の変化」とともに、「戦争の違法性、紛争の平和的解決、国際法の支配、国際協力」など、「国連の目標を達成する継続性を奨励する」と述べています。
チリのラゴス大統領は、国連改革では「国連憲章の価値観を再確認する政治的誓約の確保」が重要だと演説しました。