2004年10月8日(金)「しんぶん赤旗」
米政府調査団は、イラクに開戦時、大量破壊兵器が存在せず、開発計画も存在しなかったとの結論を出しました。大量破壊兵器の存在を唯一の根拠に、ブッシュ米政権の無法なイラク戦争をいち早く支持し、国民をあざむいてきた小泉内閣と与党・公明党の責任は重大です。
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小泉純一郎首相は、米報告で最終的に大量破壊兵器の存在が否定されても、イラク戦争支持の日本の立場に「(影響を)与えない」(七日)といいました。
そのうえ、「イラクが国連決議に従えば、戦争はおこらなかった。なぜ、戦争を回避する努力をしなかったのか不思議だ」と論点をすりかえました。しかし、これは事実を逆に描くものです。イラクは最終的に国連決議にもとづいて査察を受け入れ、それを中断させたのはほかならぬ米英の武力行使でした。
戦争を回避する努力をしなかったのはだれでしょうか。国際社会が戦争反対を掲げ、武力行使回避の努力をしていたときに、兵力をペルシャ湾に集中するなど、ひたすら戦争準備を進めていたのが米政府でした。日本政府も戦争反対の声をあからさまに敵視し、米政府の言いなりに、開戦に向けた外交的地ならしに加担していました。
首相は「国連決議にのっとって支持した」といいますが、イラクへの武力行使を容認する国連安保理決議がなかったからこそ、米英スペインは査察を打ち切り、武力行使を容認する新たな決議の採択を画策し、国際世論の反対に直面してできなかったというのが事の経過です。米英のイラク戦争は、国連決議にもとづかない無法なものです。
大量破壊兵器の存在が疑われだしてから持ち出したこれらの理屈は、首相の米国言いなりの矛盾がもたらしたものです。
ブッシュ大統領が〇三年三月、大量破壊兵器の「武装解除」を開戦の目的の一つにあげると、それをとらえて「フセイン政権に武装解除の意思がないということが断定された」と開戦を支持したのが小泉首相でした。その言明を反省し、謝罪することをせずに開き直りながら、一方で論点をすりかえるのは国民を二重にあざむくものです。
しかし徹頭徹尾、米政府の言いなりになってきた、その行き着いた先が、米政府側でさえイラクの大量破壊兵器の存在を否定したという事実でした。米国言いなり小泉政治の矛盾が極限まできたことを示しています。
小泉首相を後押しして、イラクの大量破壊兵器の保有をかたくなに主張、率先して侵略戦争の正当化に努めてきたのが公明党です。それだけに国民を欺いてきた同党の責任がきびしく問われます。
開戦に至るまで「スプーン一杯で二百万人の殺傷能力がある炭疽(そ)菌が約一万リットル」「VXガスは三・九トン以上」とテレビや国会で、その脅威を繰り返し主張。神崎武法代表はイラクの大量破壊兵器「保有」を断定していました(公明新聞二〇〇三年三月十九日付)。
イラク戦争反対を訴えた野党を冬柴鉄三幹事長は「ただ口で反戦反戦、平和平和と叫んでいても、本当の平和は構築できない」(〇三年三月二十日の衆院本会議)と攻撃。イラク戦争前に、問題の平和解決をめざしてたちあがった全世界の反戦運動を「利敵行為」と言い放ったのです。
イラク戦争後も大量破壊兵器が発見されない事態になると、今度は「日本の一・二倍の国土に隠されたんじゃ、なかなか簡単には見つからない」(冬柴氏、〇三年五月十一日のNHK討論)と居直り。大量破壊兵器の根拠を答えられなくなった小泉首相に対して、「保有していた」といわずに「イラクは大量破壊兵器を使う意図と能力と技術を持っていたことを強調するのが大事だ」(赤松正雄衆院議員、〇三年六月二十五日の衆院イラク特別委員会)と答弁指南にまで乗り出す始末でした。いまやだんまりを決めこんでいます。
公明党議員の発言の変遷
神崎武法代表「イラク問題の本質は、大量破壊兵器が保有され、これがテロリストに渡った場合にどのような危険があるのかだ」(03年3月19日付公明新聞) 冬柴鉄三幹事長「大量破壊兵器拡散の危険性が最も高い国こそ、独裁者サダム・フセインに支配されているイラクなのです」(03年3月20日、衆院本会議) ■米英のイラク占領後も大量破壊兵器の所在が明らかにならないことについて冬柴幹事長「だからいま捜し中だということで。ですからまあこれは、全然ないというわけではありません」(03年5月11日、NHK番組) ■国会でも大量破壊兵器問題がテーマに赤松正雄衆院議員「大量破壊兵器ということについて総理は…絶対あるんだ、ある、だからそれは捜せばあると、こういうふうにあまり言われない方がいいんじゃないか」(03年6月25日、衆院イラク特別委員会) ■開戦後半年経過しても…冬柴幹事長「いまから捜さなきゃいけない」(03年9月28日、NHK番組) ■「テロリズム」持ち出す高野博師参院議員「イラク戦争の大義は何かと。…大量破壊兵器の保有、有無ということではなくて、私はもう当初から対テロリズムにあるというふうに理解をしておりました」(04年2月5日、参院イラク有事特別委員会) |
日本共産党は国連憲章にもとづく「平和のルール」を重視する立場からイラク戦争に一貫して反対。イラクの大量破壊兵器保有問題でも、国連の査察による問題の平和的解決を訴えてきました。中国、中東、南アジアの諸国を訪問し、イラク戦争反対の一致点を築くとともに、当のイラク政府に対しても国連の査察受け入れを迫りました。
米英が始めたイラク戦争に「大義」があったのかどうかの根本にかかわる問題としても、大量破壊兵器の保有問題を重視してきました。
志位和夫委員長は昨年六月の党首討論で、首相のメールマガジンでイラクの大量破壊兵器保有を断定している問題を追及。首相からは「フセイン大統領だって見つかっていない」との答弁が飛び出し、「イラク問題で珍答弁」(西日本新聞〇三年六月十二日付)、「根拠ただされしどろもどろ」「首相の苦しい立場を浮き彫りにした」(北海道新聞同日付)と報道されました。
その後、穀田恵二国対委員長の追及に、大量破壊兵器を持っているとも、いないとも「断定できない」と答弁した首相。こうしたいい訳はもう通用しません。
大量破壊兵器をめぐる動き2003年 3月20日 6月 6月5日 10月2日 2004年 9月13日 10月6日 |
小泉首相の発言2003年 3月20日 3月27日 6月11日 2004年 2月5日 9月20日 10月7日 |