2004年10月8日(金)「しんぶん赤旗」
【ワシントン=浜谷浩司】六日に発表された米国のイラク調査グループ(ISG)の報告書によって、イラクのフセイン政権と大量破壊兵器を結びつけ「脅威」をあおったブッシュ米政権の主張がことごとくうそであり、イラク戦争には正当性などなかったことが改めて包括的に明らかになりました。
とりわけ、この報告がブッシュ政権の決めた調査団による結論であるだけに、内外に及ぼす影響ははかりしれません。ブッシュ政権は、米国民と世界を欺いて戦争を行ったのです。
米大統領選で最大の争点となっているイラク戦争。有権者の選択にこの報告がどう影響するかが注目されます。
違法兵器が発見されない中でブッシュ大統領がとった手は二つ。大量破壊兵器の「存在」を「製造能力」へとすり替えること、そして、結論を先へ先へと延ばすことでした。
それによって、兵器はなかったという事実の衝撃を弱め、逆に「なにかがあったはずだ」という懸念で国民をつなぎとめてきました。
ホワイトハウスのマクレラン報道官は報告書公表直前の六日午前にも、「大量破壊兵器を製造する意思と能力を維持していたことを、報告書は示すと思う」と述べています。しかし、イラクの大量破壊兵器開発能力は、一九九一年の湾岸戦争で基本的に絶たれていたことを、報告書は明らかにしています。
パウエル米国務長官は昨年二月、国連安保理でイラクの疑惑を証明する数多くの“事実”を並べ立てました。戦争突入への口実づくりが、うそで固めた前代未聞の国連演説を生んだのです。
報告書は、一九九一年の湾岸戦争以後の「積極的な国連査察」が、イラクに核兵器計画の存在を認めさせ、その構成要素を破壊したり、引き渡したりしなければならないところに追い込んだと指摘しています。
これは、国連査察が十分な成果をあげ、もし米国が戦争で査察を断ち切らなければ、イラクの大量破壊兵器問題を平和的に解決できたことを、米政府調査団として認めたものといえます。