2004年10月17日(日)「しんぶん赤旗」
| ||
|
神奈川県「池子の森」の横浜市分に米軍住宅を新しく建設する計画が大問題になっていますが、対象地域にはオジロワシなど貴重な鳥類が生息していることが、政府資料にも明記されていました。ところが、政府は、その後の生息実態を把握もせずに新たな建設計画をたて、横浜市はこれを受けいれました。
横浜防衛施設局が神奈川県に提出した「池子米軍家族住宅建設事業環境影響予測評価書」(一九八七年)によると、横浜市分の森に三十種もの鳥類が生息、そのなかには絶滅危惧(ぐ)種や条約保護対象の貴重な野鳥も生息していることが明記されています。
たとえば、オジロワシは、将来絶滅の危険性が高いことを示す絶滅危惧IB類。キビタキは日ロ渡り鳥条約、日中渡り鳥協定の保護対象。アオゲラやコサギも貴重鳥類です。
この調査がおこなわれた後、逗子市側で米軍住宅建設がはじまり一九九八年に完了しました。そのために、生息地を奪われた鳥類が横浜市分側へ移動している可能性もあります。げんに、ワシントン条約付属書IIの保護(取引規制で絶滅防止)対象のチョウゲンボウが池子の森に隣接した住宅に迷い込み、金沢動物園で治療したのち森に帰されたこともあります。絶滅危惧種でワシントン条約付属書IIの保護種であるハヤブサも、住民が二月におこなった観察行動のさい横浜市分地域の西側で目撃されました。
ところが、国も神奈川県もその後、追跡調査をおこなっていません。防衛施設庁は、「県が求めなかったので米軍住宅供用開始(九八年)後は調査していない」と説明しています。
生息実態すら把握せず、米軍住宅建設計画を押しつけることも、受け入れを表明することも、貴重な森と環境を守る立場とはいえません。
|
| ||||
(いずれも資料写真) |