日本共産党

2004年10月17日(日)「しんぶん赤旗」

何ねらう在日米軍再編

“殴り込み”どこまでも


 米国は現在、世界規模での軍事態勢の再編を進めています。先制攻撃戦略のより迅速な発動のためです。その一環として日米間では、在日米軍再編の協議が加速しています。再編案にはどんな問題があるのでしょうか。


図

海兵遠征軍と空母打撃群

異常な状態拡大

 八月十三日に米海兵隊の大型ヘリが市街地に墜落するという重大事故が起きた沖縄――。事故からわずか九日後、普天間基地の即時閉鎖・無条件撤去を求める県民の声を無視して、事故機と同型のヘリ部隊がイラクに向けて出撃していきました。

 在日米軍は、「日本防衛」とは関係のない、「海兵遠征軍」や「空母打撃群」といった海外遠征=“殴り込み”専門の部隊を主力にしています。世界にも例のない異常な特質です。

 在日米軍の再編では、こうした状態をさらに拡大し、恒久化することが狙われています。

 再編協議をめぐり小泉純一郎首相は、米軍基地が集中する沖縄の「負担軽減」を口実に本土への移転を表明しています。これまでに、海兵隊の砲兵部隊を陸上自衛隊矢臼別演習場やキャンプ富士に移転する案などが持ち上がっています。

 沖縄と岩国基地に駐留している海兵隊部隊は「第三海兵遠征軍」と呼ばれています。米海兵隊は三つの海兵遠征軍から成っていますが、唯一、海外に前進配備されているのが第三海兵遠征軍です。

 沖縄の海兵隊部隊の本土移転は、米本土を除けば世界のどの国にも置かれていない海兵遠征軍の基地を、さらに拡張することになるのです。

 横須賀基地を母港にする「空母キティホーク打撃群」も、第三海兵遠征軍と同様です。米海軍は十二の空母打撃群を持っていますが、海外に母港を置いているのはキティホーク打撃群だけです。

 米海軍は、米軍再編に関連し、二〇〇八米会計年度に退役するキティホークに代えて原子力空母の配備を狙っています。

 「地元負担の軽減」を口実に空母艦載機による夜間離着陸訓練(NLP)の岩国基地への移転案も持ち上がっています。米本土でも実施されていない人口密集地でのNLPをあくまで継続しようというものです。

司令部機能の増強 作戦範囲

アフリカ東岸まで

 在日米軍は、湾岸戦争、アフガニスタンでの対テロ報復戦争、イラク戦争など、日米安保条約が定める「極東」の範囲をはるかに超えて、地球的規模での出撃を繰り返してきました。

 現在も、第三海兵遠征軍に所属する沖縄の第三一海兵遠征隊(前述のヘリ部隊を含む)と、佐世保基地の強襲揚陸艦エセックスなど揚陸艦三隻が、イラク軍事支配のため「遠征攻撃群」を編成し、中東に展開しています。三沢、横田、嘉手納各基地の航空部隊も「航空遠征軍」として定期的に中東に出動しています。

 在日米軍の再編では、地球的規模での戦力投入=“殴り込み”態勢をいっそう強化するため、司令部機能の増強が狙われています。

 米陸軍第一軍団司令部のキャンプ座間への移転案は、その中心です。

 第一軍団は現役と予備役各二万人の兵力を有し、アジア・太平洋全域からインド洋、アフリカ東岸までの広大な地域における急派戦力です。同軍団の主力の一つである第二五軽歩兵師団第二旅団(ハワイ)は現在、イラクに展開しています。

 加えて、第一軍団の司令官を中将から大将に格上げし、在日米軍司令官も兼ね、在日陸海空軍・海兵隊の四軍全体を統括する構想も浮上しています。地球的規模の統合作戦司令部として役割の拡大が狙われているのです。

 このほか、司令部機能の強化では、すでに昨年、中東を担当地域に含む第七・第五艦隊哨戒偵察軍司令部が三沢基地に新設されています。

 横田基地の第五空軍司令部とグアムの第一三空軍司令部の統合案も協議されていますが、その担当地域はアジア・太平洋地域からインド洋、アフリカ東岸までのほぼ全域(韓国、アラスカを除く)に拡大することになります。

海外での共同作戦にらみ

自衛隊と一体化

 在日米軍の再編では、海外での日米共同作戦を視野に自衛隊と米軍とのいっそうの一体化も狙われています。沖縄の海兵隊の一部を矢臼別演習場や陸自東富士演習場に隣接する米海兵隊キャンプ富士に移転する案がその一つです。

 米太平洋海兵隊のグレグソン司令官は「日本との同盟関係をより強固にするつもりなら、基地の共同使用を検討すべき時期だろう」と強調。再編のあるべき姿を「ともに訓練し、ともに展開するわれわれ(日米)の部隊は、ともに暮らすことになるだろう」とし、基地の共同使用、演習や運用の一体化の狙いをあけすけに語っています。

 横田基地に航空自衛隊の航空総隊司令部を移転する案や、嘉手納基地に自衛隊那覇基地の戦闘機部隊などを移転する案も協議されていますが、これもその一環です。

日本共産党

米軍基地撤去を求める

 日本共産党は、在日米軍再編で「(全国各地の)基地強化の危険な動きに反対し、米軍基地の撤去をめざすたたかいは、いよいよ重要」(第二回中央委員会総会決定)になっていると呼びかけています。

 志位和夫委員長は十四日の衆院本会議代表質問で、第一軍団司令部のキャンプ座間への移転構想が「在日米軍の活動範囲を『極東』と定めた日米安保条約第六条に照らして許されるのか」と追及。「再編」をいうなら「海兵隊と空母打撃群の抜本的な縮小・撤去を(米国に)正面から求めるべきだ」と迫りました。




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