2004年10月18日(月)「しんぶん赤旗」
小泉内閣が進める「三位一体改革」で公立保育所運営費の国庫負担金が一般財源化された今年度、38・9%の市町村で保育所予算が減っていることが、日本共産党の小林みえこ参院議員が厚生労働省に求めた実態調査で、十七日までにわかりました。 江刺尚子記者
|
「一般財源化で保育サービスが低下するようなことはない」としていた厚労省ですが、各市町村では保育材料・備品を買い控えた、新規職員の採用を抑制した、保育料を値上げしたなど、子どもや利用者に大きな影響を与えています。
調査結果から、保育予算の減額にどう対応したかを見ると、保育材料などを削減(71・5%)、新規職員の採用抑制(34・1%)、パート職員への切り替え(22・1%)、職員配置の見直し(14・5%)などとなっています。
保育料への影響では、約一割の市町村が今年度から保育料の値上げを実施。その半数近くは、値上げ理由を、保育所運営費予算の減少としています。来年度保育料の値上げを予定している市町村も13・2%ありました。
また公立保育所の民営化も加速しています。今年度民営化した市町村は、前年度の五十九市町村から百二十九市町村へ倍加。来年度も百四十五市町村が予定しています。
厚労省は当初、「一般財源化しても、保育の質が下がらないよう財源は自治体で確保される」(坂口力厚労相=当時)などと説明していました。今回調査結果をまとめた保育課担当者は「一般財源化の影響は予想以上だ」とのべました。
公立保育所運営費国庫負担金の一般財源化が保育サービスに与えた影響について、厚生労働省が全国的な調査をしたこと自体重要です。保育課担当者によれば、「保育料の状況などを行政調査することはあるが公表はしない。今回のように一般財源化を基軸にその影響を調査したのはめずらしいこと」といいます。
調査のきっかけは、小林議員の質問でした。
「一般財源化の保育サービスへの影響はない」という厚労省にたいし、小林議員は三月三十一日の参院決算委員会で、一般財源化は国の保育にたいする財政責任の後退だと指摘。一般財源になれば、保育予算が確保されるか危ぐがあるとのべ、子どもたちや保育環境への影響がないか、担当省として実態をつかむべきだと要求しました。
これにたいし伍藤忠春雇用均等・児童家庭局長は「サービスが低下することはないと思うが、念のため状況を把握する必要はあると思う」と答弁。九月に全国の市町村を対象に「国会における質疑等を踏まえ、調査致したい」としたアンケートを実施しました。
その結果、保育サービスの低下につながっている実態が浮き彫りになったのです。
保育料を除く費用の半分を占める国庫負担金(千七百億円)が削減・廃止されても、その分は地方の一般財源として確保されるから影響は小さいというのが国の言い分です。しかし、今年度国から地方への財政支出は全体で三兆九千億円削られたのに、移った財源はわずか四千五百億円でした。
いまでも国庫負担の基となる国の最低基準(職員配置や施設整備の基準)が低いため、父母や保育団体の切実な要求で、多くの市町村が独自予算を追加し、保育料を減らしたり、保育士配置を手厚くするなどしています。国は、一般財源化で保育サービス低下をまねいている現状を是正するための財政措置を急いで検討すべきです。一方で、自治体も一般財源化で財政責任が増すなか、財政悪化のしわよせを安易に保育予算削減に求めることがあってはなりません。
「三位一体改革」の負担金・補助金削減で小泉首相は、今年度に続き、今後二年間で三兆円を削減するよう求めています。全国知事会など地方六団体は、削減対象リストに、私立保育所運営費の国庫負担金(約二千六百億円)を盛り込んでいます。公立に次いで私立保育所でも幼い子どもたちに大きな影響を及ぼす運営費国庫負担金の切り下げはやめるべきです。
一般財源化 国庫負担金は、事業の財源に国が責任を持つもので、配分された税金の使い道が各省庁によって細かく決められ、それ以外には使えないようになっています。一般財源化とは、国庫負担金や補助金を廃止し、地方自治体の裁量で使える地方税や地方交付税などにかえることをいいます。