日本共産党

2004年10月22日(金)「しんぶん赤旗」

イラク・ファルージャ 米軍の攻撃激化

4月の大虐殺再現の危険


地図

 イラク駐留多国籍軍を主導する米軍とイラク治安部隊による中部ファルージャ爆撃が日々激しさを増しています。イラク暫定政府のアラウィ首相が十三日に同地住民に大規模攻撃を最後通告し、翌日に米軍とイラク治安部隊が本格攻撃を開始しました。米軍はいつでも総攻撃に移る構えであり、今年四月の住民大虐殺再現の危険性が高まっています。(カイロ=小泉大介)



 米軍のファルージャ空爆は二十日も行われ、夫婦と子ども四人のイラク人一家六人が殺害されました。空爆による住民の死亡はこの一カ月間だけで少なくとも七十人にのぼるとされます。

 イラクのイスラム教スンニ派有力組織、イスラム聖職者協会は二十日、バグダッドで会議を開き、ファルージャの宗教指導者も交えて米軍の攻撃激化への対応を協議しました。

 米軍と暫定政府を非難し、国連安保理に責任ある行動をとるよう要求するとともに、攻撃が続くかぎり、イラク国民は来年一月末実施予定の国民議会選挙をボイコットすべきだと訴えました。

 アラブ首長国連邦の衛星テレビ・アルアラビアは十九日、ファルージャ現地の様子を放映しました。ある男性住民は「われわれが何の罪を犯したというのか。外出から帰ってみると自分の家が全壊しているような状態のどこに、米国のいう自由や民主主義があるのか」と告発しました。

 米軍は十五日、同地住民代表の責任者としてイラク暫定政府との停戦交渉にあたっていたアルジュマイリ氏まで逮捕しました。十八日に解放された同氏は「停戦交渉は中止する。これもすべて米国の責任だ。家屋が破壊され、女性や子どもたちが殺されているなかでどのような和平が可能だというのか」と怒りをあらわにしました。

 米軍と暫定政府は攻撃の理由にテロ首謀者とするザルカウィ氏の同地への潜伏をあげています。しかし、六月中旬以降、数十回におよぶ空爆の犠牲者の多くは女性や子どもなどの民間人です。

 米軍とイラク治安部隊はあわせて千人以上の兵力をファルージャ周辺に展開、増強をつづけています。住民は総攻撃開始への不安からつぎつぎと避難を開始しています。


反占領住民の打倒が狙い

聖職者協会報道官語る

 緊迫するイラク・ファルージャ情勢について、イスラム聖職者協会の報道官で、同協会機関紙バサーエルの編集長でもあるムハンマド・ファイディ氏は本紙の電話取材に次のように答えました。

総攻撃の端緒

 ―米軍の攻撃激化をどう見ますか。

 われわれは現在の攻撃がファルージャ総攻撃の最初の段階だと認識しています。この攻撃は同軍がイラクで犯した数々の犯罪にさらなる犯罪を重ねるもので、正当性のかけらもありません。米軍はこれまでにも同地にたいする攻撃を続けてきましたが、今回の総攻撃ともいえる動きは、ファルージャ住民代表とイラク暫定政府との間で停戦に関する協議がすすみ、合意する寸前に起こったものであり、その犯罪性は特別です。

 ―米軍とイラク暫定政府はザルカウィ氏の「潜伏」をファルージャ攻撃の理由にしていますが。

 停戦協議ではザルカウィ氏の話題など出ていませんでした。にもかかわらず、アラウィ首相が突然、本格攻撃の最後通告の理由として持ち出してきたのです。すべてのファルージャ住民が同地にザルカウィ氏などいないと確信しています。ザルカウィ氏を理由にした最後通告は、イラク戦争の口実となった大量破壊兵器の存在が完全に否定された後にでてきたものであり、ファルージャにたいする攻撃の新たな口実として持ち出されたにすぎません。

 ―米軍の攻撃激化の真の狙いはどこにあると考えますか。

 イラクでは来年一月末を期限に国民議会選挙が予定されていますが、これは米占領軍によって企図されたもので、多くの国民が反発しています。米軍はこの選挙にむけ、占領に屈しない都市とその住民を打倒することを目的としているのです。

国民は抵抗を

 ―聖職者協会としての対応は。

 ファルージャの主立った宗教指導者が協会を訪れ、同地の状況と住民の願いをイラク全土の指導者に伝えるよう求めています。ファルージャ住民の願いは、米軍にたいする全土の国民の抵抗と、場合によっては攻撃にたいするジハード(聖戦)をおこなうことです。われわれも、現地の指導者と真剣に協議しています。

 ―イラクの今後の政治プロセスにどのようにかかわりますか。

 われわれは従来から、占領下でのいかなる政治プロセスも国民の信頼を得られないとの立場を表明してきました。重要なのは、政治プロセスにたいするイラク国民の完全な信頼と、これが占領軍の利益とならないような仕組みづくりです。聖職者協会は選挙に臨む条件として、占領軍のイラクからの撤退と国連による直接の選挙監督を求めています。占領軍のためではないイラク国民のための政府樹立にむけ、シーア派やクルド人などイラクのすべての宗派、民族と協力していくことが重要だと考えています。


カット

 イスラム聖職者協会 イラク戦争開戦後の昨年五月にイスラム教スンニ派の宗教指導者によって結成されました。現在、千人以上の宗教指導者が参加し、スンニ派住民の多いイラク中部を中心に三千以上のモスク(イスラム教礼拝所)を影響下に置いているとされます。米国のイラク占領を厳しく批判し、日本の自衛隊を含む外国軍の撤退を要求するとともに、米軍の影響下にあるイラク暫定政府やその監督機関である諮問評議会にも批判的立場をとっています。反占領の武装闘争とは一線を画し、デモや交渉など平和的方法による占領の終結を目指しています。今年四月の日本人拉致事件では、武装勢力に人質の解放を呼びかけるなど、解決のために尽力しました。



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