日本共産党

2004年10月28日(木)「しんぶん赤旗」

地球規模の戦争司令塔に

陸・海・空・海兵 在日米4軍を統括

米陸軍第1軍団司令部

キャンプ座間(神奈川)への移転構想


 日米間で協議されている在日米軍の再編で、米陸軍第一軍団司令部(米ワシントン州)をキャンプ座間(神奈川県)に移転する問題が、大きな焦点の一つになっています。第一軍団は、アジア・太平洋地域やインド洋に加え、イラクにも展開する緊急即応軍。その司令部を日本に移転する狙い、問題点はどこにあるのでしょうか。


地図:米太平洋軍の責任地域

■先制攻撃を迅速に

 在日米軍の再編は、ブッシュ米政権が進める地球的規模での軍事態勢見直しの一環です。ブッシュ政権は「アフガニスタンでの作戦と(イラク戦争など)より広範な地球的規模でのテロとのたたかいで、軍事態勢の戦略的再編がなにより必要になった」(ホワイトハウス説明資料、八月十六日)と強調。「テロとのたたかい」を口実に、米国の「国益」を実現する先制攻撃戦略を全面的かつ迅速に遂行する態勢を構築しようとしています。

 アジアでは特に、「中央、北東、南東アジアにおける広大な距離の克服」(ファイス米国防次官、六月二十三日、米下院軍事委員会での証言)を重視。「長距離攻撃能力の強化」とともに「司令部の統合と効率化」(前出のホワイトハウス説明資料)を進めようとしています。

 その最大の“目玉”が、第一軍団司令部のキャンプ座間への移転です。

■米太平洋軍の中軸

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イラク中部サマラで銃を構える、第一軍団所属の第2 師団第3旅団の兵士たち(米陸軍ホームページから)

 第一軍団は現在、米西海岸ワシントン州の陸軍基地フォートルイスに司令部を置いています。同基地に約二万人の現役兵力を有するほか、全米各州の予備役や州兵合わせて約二万人も統括。このため、「アメリカ軍団」の異名を持っています。

 第一軍団の司令官は、米議会での証言(一九九九年三月、上院軍事委員会)で「米太平洋軍の主要な作戦司令部」であり、「(神奈川県)横須賀(基地)の第七艦隊や沖縄の第三海兵遠征軍」と並んで「戦域での不測事態に対処する常設の統合任務軍」だと強調。アジア・太平洋全域からインド洋、アフリカ東岸までを責任地域にする米太平洋軍の中軸であることを明らかにしています。

 しかも、傘下の主力部隊である第二歩兵師団第三旅団と第二五軽歩兵師団第一旅団はいずれも、中型輸送機でも空輸が可能な最新鋭の装甲戦闘車「ストライカー」を装備。世界各地に迅速展開し、即座に戦闘に突入する「ストライカー旅団戦闘チーム」に指定されています。現在、第一軍団傘下の他の部隊とともに、交代でイラクにも派遣されています。

 移転が実現すれば、「日本防衛」とは関係なく、米本土を拠点に地球的規模で“殴り込み”をかける陸軍部隊を指揮・統括する前線司令部が日本に置かれることになるのです。

■在日司令官も兼務

写真

キャンプ座間の 正面ゲート前

 日本にはすでに、第三海兵遠征軍や第七艦隊の司令部に加え、横田基地(東京都)には第五空軍の司令部も置かれています。第一軍団の司令部が移転すれば、米四軍(陸・海・空・海兵)すべての前線司令部が日本に置かれることになります。

 しかも重大なのは、現在、横田基地にある在日米軍司令部を、キャンプ座間に置く第一軍団司令部に移し、在日米四軍全体を指揮・統括する構想があることです。司令官もこれまでの中将から大将に格上げします。

 在日米軍司令部は現在、(1)日米両政府の関連取り決めの執行(2)在日米軍基地の管理・運営(3)日米共同演習の指揮――などを担当する行政的な機構にすぎません。司令官は中将です。

 同構想が現実になれば、在日米軍の司令官は、太平洋軍や中央軍、欧州軍といった米戦域統合軍の司令官(大将)と同格になります。在日米軍司令部も、地球的規模での軍事作戦を指揮する戦争統合司令部に変質してしまうことになります。


「極東条項」変えないというが…

 日米安保条約第六条は、米軍への基地提供の目的を「日本国の安全」とともに「極東における国際の平和及び安全の維持」と定めています(極東条項)。

 日本に駐留する米軍部隊はこれまでも「極東」をはるかに超えて、ベトナムやアフガニスタン、イラクなど地球的規模での出撃を繰り返してきました。それらの司令部も日本に置かれてきました。

 しかし、第一軍団司令部が在日米四軍の統合司令部として地球的規模での戦争を指揮することになれば、安保条約でも到底説明できない事態はいっそう重大な新たな段階に進むことになります。

 政府は、第一軍団司令部の移転問題に関し「現行の安保条約及び関連取り決めの枠内で行われることは当然であり、『極東条項』の見直しといったことは考えていない」との統一見解を明らかにしています(二十一日)。

 一方で、統一見解は「わが国の施設・区域を使用して指揮・統制を行う司令部が具体的にどのような活動を行うかについてはさまざまな可能性があり得るため、安保条約第六条との関係を一概に申し上げることはできない」とし、移転受け入れを否定しませんでした。

 しかし、第一軍団司令部の任務、移転の目的が安保条約にさえ反することは明らかです。受け入れはきっぱり拒否すべきです。



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