日本共産党

2004年11月1日(月)「しんぶん赤旗」

香田さん殺害

“事件と派兵は別”ですませられるのか


 イラクで武装勢力に拘束され、人質にされていた香田証生さんが惨殺された事件で、小泉純一郎首相は十月三十一日、犯行を非難する一方、自衛隊派兵への影響について「これとはまた別だ。今回の事件が直接は影響しない」と語りました。しかし、今回のような悲惨な事態をイラクで二度と繰り返させないと真剣に思うのなら、“事件と自衛隊派遣とは別”といってすませられるのでしょうか。

戦争と占領支持

 イラクをテロリストの温床にし今回のような事件が繰り返される土壌をつくり出した根本には、米国が国連憲章も無視して昨年三月に引き起こした先制攻撃の戦争とそれに続く占領があります。

 小泉・自公政権は、「日米同盟」を最優先する立場から、この戦争と占領をどの国よりもいち早く無条件で支持。さらには、国民多数の反対世論に逆らって自衛隊の派兵を強行し、それに直接的にも加担してきました。

 今回の事件を受けてもなお「自衛隊が行っている人道復興支援を引き続き行っていく」(細田博之官房長官、十月三十一日)と派兵の継続にかたくなに固執しています。

 「人道復興支援」といって派兵を正当化しようとしていますが、米国がイラク戦争を引き起こす口実とした大量破壊兵器は存在しなかったことが確定。戦争と占領を支持した大義も、自衛隊を派兵する根拠も、根底から失われています。

 今もイラクでは、米軍が「テロ掃討」などを口実に子どもや女性を含め罪のない多数の民間人を無差別に攻撃するなど無法行為を繰り返しています。米軍を中心とした駐留外国軍へのイラク国民の憎しみと怒りは広がっています。

 サマワに駐留する陸上自衛隊部隊の宿営地を狙ったとみられる砲撃も、宿営地が完成した今年四月以降で、七回にものぼっています。十月八日には、陸自が設置した日本とイラクの友好記念碑が爆破される事件も起きています。同二十三日の七回目の砲撃では、初めて宿営地内に着弾。自衛隊の「非戦闘地域」での活動を定めたイラク特措法に照らしても、派兵を続ける根拠はなくなっています。

政策転換今こそ

 イラクの情勢がますます悪化する中、イラクから軍隊を撤退させる国が相次いでいます。自衛隊と同じサマワで活動するオランダ軍も来年三月を派兵期限にしているほか、派兵期間を延長しながらも部隊の規模を縮小する国も少なくありません。

 ところが、防衛庁はすでに、十二月十四日に切れる派兵期限をさらに延長し、サマワで活動する陸自部隊の規模を六百人から六百五十人に増員する案をまとめています。

 今後も大義のない戦争と占領への支持・加担を続けるのなら、自衛隊だけではなく罪のない日本の民間人が攻撃の標的となる悲劇が繰り返される危険はなくなりません。

 最近の世論調査でも、六割以上(63%)が自衛隊派兵の延長に反対しています(「朝日」十月二十六日付、賛成は25%)。小泉首相は、今回の事件を受けた記者会見で、十二月十四日に切れる派兵の延長について「イラクの情勢を総合的に考えて、判断していかなくてはいけない」とも語りました。そうであるなら、今こそ自衛隊の撤退を決断し、対イラク政策を根本的に見直すべきです。榎本好孝記者



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