日本共産党

2004年11月9日(火)「しんぶん赤旗」

米地上軍のファルージャ突入

イラク人 激しい怒り

傷おった住民に また攻撃か

女性、子どもの被害計り知れない/“反米の声消す目的”


 イラク駐留多国籍軍を主導する米軍はいま、一万人以上もの兵力で中部の都市ファルージャを包囲、これまでの空爆に地上軍侵攻を加えた総攻撃を開始しつつあります。ブッシュ米大統領は再選後の「初仕事」として、新たなイラク人大量虐殺と、イラクの将来に破壊的な結果をもたらす、この攻撃を実行しようとしているのです。ファルージャ住民を含むイラク人は七日、本紙の電話取材にたいし怒りの心境を語りました。(カイロ=小泉大介)


 首都バグダッド在住の主婦、ナワール・ジャセムさん(45)。

 出身地であるファルージャに住む両親は米軍の爆撃で負傷しているため動けない状態です。しかも米軍が同地を封鎖しており訪ねることができません。ジャセムさんの胸ははちきれそうです。

 「戦争がはじまるまではすべてのファルージャ住民が平和のうちに生活していました。しかし幾多の空爆によって、いまは深い深い悲しみと傷を背負っています。米軍はこの住民にさらにダメージを与えるという信じがたい行為をしようとしているのです。しかも最も慈悲の心が必要なラマダン(断食月)の最中に…」

 ジャセムさんは、米軍の総攻撃にたいしても、ファルージャ住民は最後の最後まで抵抗をつづけるだろうとの確信を語ったうえで、ブッシュ米大統領へ激しい怒りをぶつけました。

 「ブッシュ大統領はイラクで圧力と武力をこれでもかと使った結果、さらなる暴力以外の何物ももたらしませんでした。しかし大統領は、再選後も考えを変えていません。イラク人の苦しみには何の考慮も払わず、凶暴さはさらに激しさを増しています」

「多くの青年が 占領軍に抵抗」

 米軍包囲下のファルージャ(約三十万の人口のほとんどがイスラム教スンニ派)。イラク・イスラム党の同地の幹部、カレド・ムハンマド氏(43)はファルージャの現状について「悲劇的だ」と語ります。

 同氏によれば、現在、ファルージャ上空には米軍の戦闘機が昼夜を問わず展開し、同市の北から南まで爆撃を繰り返しています。六―七割の住民が市外に避難しましたが、男性以外にも女性や子ども多数がとどまっており、総攻撃が強行されればその被害は計り知れないものになると指摘します。

 ムハンマド氏は米軍が総攻撃の理由に、テロ勢力であるザルカウィ一派の存在をあげていることについて、「私を含め、住民のなかでザルカウィを目撃したものなど一人もいない。外国人の武装勢力も少数にすぎず、総攻撃の理由になどなるわけがない」と強調。「攻撃の真の理由は、イラク中から反米の声を消すため、抵抗の象徴であるファルージャをつぶすということだ。ブッシュ再選はムスリムのさらなる流血を意味し、ファルージャ住民がその最初の犠牲になろうとしている」と語気を強めました。

 同地の宗教指導者、ガミール師(39)は「ファルージャに残った住民は食糧を得るための外出もできない状況だ。しかし、住民は米軍の圧力に屈したりはしない。多くの青年が銃を手にし占領軍に抵抗するため準備している。これは正当な抵抗だ」といいます。

 米軍のファルージャ総攻撃とブッシュ大統領への怒りは首都バグダッドでも満ち満ちています。

 中学校教師のアハマド・ジャセムさん(30)が「ファルージャ総攻撃の目的がイラク解放を要求するイラク人の声を一掃することにあるのは明らかです。イラクのスンニ派住民はすべてがファルージャのたたかいを支持しており、総攻撃が起きれば巨大なデモが繰り出すでしょう」と語ります。

大混乱もたらし選挙も失敗する

 電力省職員のハイダル・サラディンさん(33)も言います。

 「ブッシュ大統領は民主化を語るなら、まず反対者の声を聞くべきです。しかし実際にやっているのは占領反対の声を力でかき消すことだけで、フセイン元大統領以上の悪者です。総攻撃は大混乱と反撃をもたらし、選挙も失敗するでしょう。ファルージャではすべてのスンニ派住民が攻撃に反対しているのです」

 ファルージャ総攻撃をめぐっては、国連のアナン事務総長が来年一月予定の国民議会選挙実施をはじめとしたイラク復興を台無しにするとして、その中止を米政権やイラク暫定政府に要請しています。

 イラクの有力なスンニ派組織、イスラム聖職者協会のファイディ報道官も「ファルージャ総攻撃の目的は無辜(むこ)の民のせん滅であり、これが実施された場合、イラクの宗教者は重大な決意をもって国民に選挙のボイコットを訴えることになる」と警告しています。

 ファルージャではこの四月、米軍の無差別攻撃で約七百人の住民が虐殺されました。今回、総攻撃が強行されれば、冒頭のジャセムさんの両親のような罪もない多数の住民の命が再び危機にさらされます。再選で得意顔のブッシュ米大統領には一片の痛みもないのか。



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