2004年11月12日(金)「しんぶん赤旗」
【カイロ=小泉大介】米軍によるイラク中部ファルージャへの総攻撃は十日から十一日にかけても激しさを増し、多数のモスク(イスラム教礼拝所)まで爆撃するなど、せん滅作戦の様相をあらわにしています。米軍は市内の七割を制圧したとしていますが、猛爆の被害と医療体制の崩壊により、同地住民の状態は悲惨を極めています。
カタールの衛星テレビ・アルジャジーラは十日、現地在住のジャーナリストの話として、ファルージャ市内の約百二十のモスクの半数が破壊されたと伝えました。米軍は武装勢力がモスクに潜伏していることを爆撃の理由にあげていますが、イラクはもとより世界中のイスラム教徒からの反発が激化するのは必至です。
一方、ロイター通信によると、ファルージャ西部の避難民キャンプでは医師がいないため、産気づいた妊婦が母子とも死亡したり、毒ヘビにかまれた少年が通常なら治療が容易であるにもかかわらず死亡するなどの悲劇が相次いでいます。
イラク赤新月社(赤十字社に相当)のスタッフからは「米軍にファルージャで住民を救援する許可を求めているが、なんの反応もない。ファルージャには医薬品も水も電気もない。住民はわれわれの支援を必要としている」「これは人道上の大惨事であり、ほかに言葉が見つからない」との痛切な声が上がっています。
総攻撃にたいしてはイラク暫定政府の中でも批判が広がっており、暫定政府の前身の統治評議会議長を務めたパチャチ氏は十日、英BBC放送のインタビューで「過度の武力行使が逆効果となり、巨大な怒りを生み出すことを懸念する」と述べました。