日本共産党

2004年11月15日(月)「しんぶん赤旗」

香田さん殺害と自衛隊駐留

イラク人の声は

私たちは、民間人拉致を拒否します


 香田証生さんがイラクでテロ組織に拉致され先月末殺害された事件は、日本と世界に衝撃を与えました。イラクの人たちは民間人を人質にし殺害するという蛮行を一致して糾弾しています。同時に事件の背景にある自衛隊のイラク駐留にも反対しています。その声を紹介します。(カイロ=小泉大介)


占領軍こそ原因

 アブドルサラーム・クベイシ師(イスラム聖職者協会幹部)

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アブドルサラーム・クベイシ師

 われわれは民間人の拉致に同意もしなければ支持もしません。民間人拉致は抵抗運動とはなんの関係もありません。

 私は取材をうけた日本のメディアに対し、聖職者協会として人質解放に力を尽くすと述べました。しかしそれには条件があったのです。それは、日本の首相がこの問題でいかなる声明も出さないということでした。しかし残念なことに首相は、拉致犯人をテロリストだと声明してしまいました。人質がいまだ犯人の手の中にある時点でです。政治問題と人道上の問題との区別ができなかったのです。

 占領軍こそ、拉致事件を激化させている最初の、そして最大の原因です。米軍は現在、かつてのどの時期よりも凶暴になっています。彼らは抵抗に直面し、いたるところで殺人、破壊、爆撃行為をおこなっています。

 占領軍が最初にイラクにやってきた際には、彼らに石を投げる子どもはいませんでした。しかしいまは違います。小さな子どもまで米兵に強烈な敵意を持っており、テレビに米兵が映っただけで、スクリーンに物を投げつける子どもまで見られるのです。

人質殺害はテロ

 ファトマ・サルウミさん(女性ジャーナリスト)

 このような犯罪行為はイスラム教徒をまったく代表していません。この行為はテロであり、真の抵抗運動とは相いれません。

 これらの行為を根絶する唯一の方法は、多国籍軍の撤退であり、国際的にも認知されたイラクの政府をつくることです。

 一人のイラク人として、日本人に平和のメッセージを送るとともに、自衛隊が一刻も早くイラクから撤退することを望みます。米軍を追い出すことはもちろんです。

日本は再検討を

 ジダン・アッルベイエ氏(イラク国民連合ナセル主義党書記長)

 イラクにおける自衛隊の存在に関していえば、私は日本政府がイラクの占領軍に貢献することのないよう、イラク政策を再検討すべきだと考えます。もしイラクから占領軍がいなくなれば、私たちは日本の国民にたいし、親近感と感謝の気持ちを抱くでしょう。

「復興」ではない

 マーヘル・アッショマリ氏(政治評論家)

 私は占領軍に無関係の人間を拉致することに反対ですし、聖職者からもそれを拒絶する宗教令が出ています。イラクにはさまざまな犯罪集団が存在していますが、それはすべて米占領の結果としてもたらされたのです。もし、米占領軍の撤退時期が明確になれば、すべての問題が改善の方向に向かうでしょう。

 私には、軍服を着て、武器を携行する軍隊が復興のためにやってきたなどとなぜいえるのか、理解できません。イラク戦争の前にもイラクには日本の大企業や建設会社の労働者がいましたが、当時は危険な目に遭う日本人は誰もいませんでした。

 日本の国民に訴えます。日本の純粋なイメージを守るため、政府に自衛隊を撤退するよう圧力をかけることを。

外国の軍は拒否

 マハ・アブデルファタさん(女性を支援する全国連盟)

 私は、人間性を大事にする立場から拉致行為に反対します。占領こそ、拉致事件や、これを引き起こしているザルカウィやその他の過激組織が現れたことの最大の原因です。

 私たちイラク人は、北から南まで、イラクに存在する外国軍を拒絶しています。そこには日本の軍隊も含まれます。米軍の一部としてイラクにやってきているからです。

攻撃拡大の根拠

 サバーフ・アルジャーフ氏(ジャーナリスト)

 拉致行為を私たちは非難し、拒絶します。しかし、拉致事件の最大の原因は米占領に協力する国々です。日本の首相が自衛隊を撤退させないと明言したことは、今後、自衛隊に対する攻撃拡大の最大の根拠となるでしょう。

 イラク人はさまざまな勢力の協力と統一を基礎に、新たなイラクを建設する能力を持っています。西側の民主主義とは違った、正義に基づくわれわれの民主主義をつくりだすこともできます。日本を含むすべての外国軍がイラクから撤退することを要求します。

苦難を理解して

 カリーム・ハムザ氏(バグダッド大学教授・社会学)

 占領軍はイラクで巨大な誤りを犯しました。治安と安定を担う組織を解散させてしまったこともその一つです。そのような状況の下、世界中から悪の勢力がイラクに集まってしまったのです。

 死亡した日本人にお悔やみを申しあげます。一方で、同じように、日本の国民がイラクの国民にいま以上に心を寄せ、私たちの苦しみに関心を持つよう望みます。問題は、経済的支援の額ではありません。イラクが毎日、どのような苦難のもとで生活を送っているかをしっかり理解してもらえるかどうかなのです。

復興は私たちで

 スアード・トラーンさん(主婦)

 米占領軍はわが国を破壊し、巨大な混乱をもたらし、そしてすべての拉致と殺害の行為をそそのかしてきました。イラク社会はこの米占領軍を拒絶しており、占領が存在するかぎり抵抗が終わることはありません。

 日本政府は自国民の生命に関心を持っていません。なぜなら、米国との間の利益の方が国民の命よりも大きく重要だと考えているからです。

 私たちにとっては、日本の軍隊も米占領軍の一部です。日本の軍隊は米連合軍の枠組みのなかでイラクにやってきたのです。占領とともにある復興などありえるでしょうか。

 戦争開始から二年近くがたちましたが、私たちは米国によるいかなる復興も見ることができません。国民が望んでいるのは米軍とすべての同盟軍がイラクから出て行くことです。外国軍が出て行った後で初めて私たちは合法的な政府を選び、自分たちの手で復興することも可能になるのです。

 私は日本の母親がすぐに息子をイラクから呼び戻し私たちの現実を伝えてほしいのです。イラクの母親は、息子が外出したら最後、彼がいつ戻ってくるのか、はたして戻ってこれるのかどうかもわからない、つらい思いで日々を暮らしています。

自衛隊は米軍の一部です。一刻も早く撤退を

米兵に腹が立つ

 マルヤムさん(十五歳の少女・中学生)

 拉致や自動車爆弾がこわくて、私は時々、学校にいくのがいやになります。でもお母さんはいつもいいます。私たちは恐怖を乗り越えて前に向かっていくしかないと。そうしなければ私たちはいつまでも恐怖におびえ、自分たちの国を再建する能力を失ってしまうと。

 私は学校にいく途中で米兵を見るたびに腹が立ちます。占領軍の兵隊が私たちの国をわが物顔で歩いているのを見るだけで胸が張り裂けそうな思いになります。もし占領軍がいなくなれば、テロ攻撃や拉致事件は減って、だんだんと治安が元に戻っていくのではないでしょうか。

米は対話を拒否

 ナディア・シュカーラ氏(バグダッド大学教授・政治学)

 私は外国民間人にたいする拉致、殺害行為を拒否します。しかし、それはイラクにたいする米国の政策がもたらした結果です。米国による誤った力の政策は、カオスと化した状況を利用する過激なテロ集団の出現をもたらしてしまいました。

 米軍はいまだにイラクの各都市を爆撃し、対話の政策を拒否しています。この米軍の態度こそ、あらゆる暴力行為の拡大をもたらしています。ブッシュ米大統領が宣言した先制攻撃の政策とは、相手がテロリストであるかどうかも定かでないにもかかわらず、勝手に攻撃をおこない、一般市民の家々を破壊することです。

 私は日本がこれ以上、イラクにおける米国のゲームにつきあうことのないよう望みます。

米国追随が問題

 アドナーン・アッサフィ氏(ムクタダ・サドル師報道官)

 われわれはイスラム教を信じる者として、拉致行為を拒絶し、これを非難します。米占領者こそ、拉致行為に責任を負っていると信じています。

 バグダッドでもその他のあらゆる地域でも、状況は悪化の一途をたどっています。米軍がイラクの街をかっ歩し、失業率が高まりつづける限り、イラクを巨大な困難に導くことは確実です。

 われわれは日本国民に、軍事力とは違う方法でイラクを支援してもらえるよう希望しています。イラク人の誰一人として、日本が軍隊としてイラクに存在することを支持していません。われわれは、日本政府の米国追随こそ真の問題であることを確信しています。

きずなが崩壊へ

 アブデルハーディ・アルダラジ氏(ムクタダ・サドル師報道官)

 われわれは日本が軍隊を送ることを拒否してきました。イラク人と日本人との強いきずなは、日本が軍隊を送ったことで崩壊に向かっています。

 イラク人によって占領軍の一部とみなされている自衛隊は撤退すべきです。それはすべてのイラク人が望んでいることです。



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