2004年11月19日(金)「しんぶん赤旗」
【カイロ=小泉大介】イラク中部ファルージャのモスク(イスラム教礼拝所)で米海兵隊員が負傷した非武装のイラク人を銃殺した生々しい米NBCテレビの映像は、アラブの衛星テレビで十六日、終日繰り返し放映されました。この銃殺事件に反発する世論はイラクはもとよりアラブ全体で強まっています。十七日付のアラブ各紙の社説の多くが「ファルージャの戦争犯罪」などの見出しを掲げ、この蛮行とともにファルージャ総攻撃そのものを厳しく非難しました。
ロンドン発行の汎アラブ紙アルクドス・アルアラビは「この行為はあらゆる種類の道徳や市民法から完全に逸脱したものである。しかもイスラム教徒にとって最も神聖で安全でなければならない場所で起きたものであり、絶対に認められない」と強調。さらに「これは氷山の一角にすぎない。ファルージャは巨大な墓場となってしまったのだ」とのべたうえで、「この犯罪行為こそ、イラクにおける抵抗の激化をもたらす原因となっている」と指摘しています。
「ファルージャの実情を伝える情報が少ないなか、助けを求める負傷者を銃撃した国際法違反の行為を撮影した映像は、同地で一体何が起きているのかを想像させるに十分なものだ」と指摘するのはサウジアラビアのアルジャジーラ紙。「この戦争犯罪行為は、ファルージャでは家屋やモスクの大規模な破壊、膨大な数の民間人の犠牲が出ていることを明らかにした」と強調しました。
アラブ首長国連邦のアルバヤン紙は「この戦争犯罪に沈黙はできない」との見出しを掲載。「良心は死に、正義は倒れ、法は強者の手に落ちたのであろうか。映像に映った行為は、あらゆる人間性と国際法の醜い侵害である」「今回の映像により、悲惨なファルージャが死臭ただよう集団墓地となってしまったことが暴露された」「責任は銃撃した兵士だけが担うべきではない。軍指導部にこそ向けられるべきだ」と指摘しました。
サウジアラビアの英字紙アラブ・ニューズは「アブグレイブ(収容所での拷問・虐待)の記憶がいまだ新鮮ななか、米軍は新たな問題を引き起こした」とのべて蛮行を繰り返す同軍を非難したうえで、「占領はファルージャでの残虐行為が示すように、暴力とこれにたいする抵抗をもたらさざるを得ない。占領は終結されなければならない」と強調しました。
ヨルダンのアッライ紙も「この映像はアブグレイブにおける人権侵害を思い起こさせる」と指摘したうえで、「いまこそ、ファルージャが直面し、バクバやモスルでも起きつつあるすべての軍事作戦を中止させる時である。そうでなければ、イラク人の怒りと憎しみを深め、選挙実施という大目標も台無しにしてしまうだろう」と訴えました。
さらにエジプトのアルアハラム紙は「ファルージャはいま、犠牲者が数千人に達するという恐るべき大量虐殺に直面している」「ファルージャやその他のスンニ派地域で起きている破壊的攻撃は、安定を達成するどころか、イラクの破壊と憎しみの増大をもたらし、不安定を深めるだけである」とのべ、米軍の総攻撃を批判しました。