2004年11月25日(木)「しんぶん赤旗」
【シャルムエルシェイク(エジプト)=小泉大介】イラクとその周辺国に主要八カ国(G8)を加えた二十カ国以上の外相が参加し、エジプト・シナイ半島の保養地シャルムエルシェイクで二十二日から開かれていたイラク国際会議は最終日の二十三日午後、イラクの政治復興プロセスにおける国連の主導的役割を強調し、国民議会選挙により広い政治勢力の参加を求める最終声明を採択して閉幕しました。
同会議には国連のアナン事務総長、アラブ連盟、欧州連合(EU)、イスラム諸国会議機構(OIC)の代表も出席。
最終声明はイラクの主権、政治的独立、領土的一体性などを再確認したうえで、今年六月に採択された国連安保理決議一五四六が定めた政治プロセス(来年一月の選挙実施、憲法制定、来年末までの正式政権発足)における国連の主導的役割を強調しました。
声明はイラク暫定政府に対し、暴力を否定するあらゆる勢力をイラクの政治プロセスに参加させるよう努力することを求め、来年一月末実施予定の国民議会選挙前に、多様な政治的・社会的勢力を集めた会議を開催するよう訴えました。
激化する治安悪化、米軍の軍事攻撃に関し声明は、「あらゆるテロ行為を非難する」と表明。他方で「イラクのすべての当事者にたいし、過度の武力行使を避けるよう要求する」とのべました。しかし、米軍のファルージャ総攻撃にたいする具体的非難はおこなわれませんでした。
また会議の最大の焦点であった多国籍軍の撤退問題で最終声明は、「終了(撤退)時期は無期限ではなく、国連安保理決議に定められた政治プロセスの完了に従って終了する」と確認しました。
イラク国際会議は最終声明で、イラク政治プロセスにおける国連の主導的役割を強調し、来年一月末実施予定の国民議会選挙までにイラクの多様な勢力による会議を開催するよう促すなど、政治プロセス推進に向けた一定の積極的方向を示しました。しかし、イラク各地での米軍の無差別攻撃に対する非難もないなど、重大な問題を残しました。
アラブのジャーナリストは「会議は国際的認知をとりつけたいイラク暫定政府がエジプト政府に強く働きかけて実現した。問題を安保理決議の枠内で解決する方向を示す一方、イラク長期駐留をめざす米政権と暫定政府の強い圧力も反映した。結局、イラクのいっそうの混乱を引き起こしかねない」と語りました。
バルニエ仏外相は会議で、「イラクの政治プロセスにたいする可能な限り多数の国民の支持と参加」と「外国軍撤退の見通し」の二点がイラク復興にとって死活的だと強調。シリアのシャラ外相は「街の破壊、罪のない人々の殺害の中止」を強調しました。イラン政府は「イラクからの米軍の撤退の必要性を主張し、米国のやり方に抗議する」と表明しました。フランスやシリア、イランが求める撤退期限は明記されませんでしたが、駐留は無期限ではないとし、来年十二月末の新政権樹立をくぎりとしたのは米国にクギをさしたともいえます。
これらの動きは、米国とイラク暫定政府が最終声明採択という「成果」を得たものの、国際社会ではイラク復興をめぐる二つの道が依然として激しく対立していることを浮き彫りにしています。
また仏政府やイラク国民が望んだイラクの抵抗勢力・組織の会議参加が、米政権とイラク暫定政府の強硬な反対により最後まで認められなかったことも重大です。
イラクのイスラム教スンニ派有力組織、イスラム聖職者協会のダーリ事務局長は二十一日、「会議は占領を支持するものだ」と厳しく批判。シーア派指導者ムクタダ・サドル師側近のスメイシム師も二十三日、本紙の電話取材に対し「会議は占領に資するものであり、それを正当化するものだ」と強調しました。
会議開催地に乗り込みながら会議参加どころか滞在すら拒否されたイラクのスンニ派部族の有力者、ドレイミ氏らは二十三日に声明を発表し、イラクにおけるテロを非難するとともに、米軍によるイラクでの無差別攻撃の即時中止、占領状態の終結を求めました。
イラク国際会議が明らかにしたのは、このイラク人の声に率直に耳を傾け、彼らの苦難の根本にある占領と軍事攻撃をやめさせる具体的手だてを明確にすべきだということです。それがない限りイラクの混乱は激化することはあっても収まることは決してないでしょう。 (シャルムエルシェイク〈エジプト〉=小泉大介)