日本共産党

2004年11月26日(金)「しんぶん赤旗」

家計にズシリ

政府税調 来年度の増税答申

経済減速のなか


 政府税制調査会(石弘光会長)が二十五日、小泉首相に答申した二〇〇五年度税制「改正」が描く税の姿は、冷え込む家計にズシリと響く負担増の嵐です。山田英明記者

表

定率減税廃止 あなたは

 政府税調の答申は、所得課税の定率減税を、「〇六年度までに廃止する」と明言しました。定率減税が全廃されれば、総額三・三兆円もの負担増が国民に押し付けられることになります。

 所得税額や住民税額は、各世帯の状況や年収によって税額が変化します。そのため、定率減税廃止の影響は、各世帯によって異なります。

 たとえば、専業主婦の妻と子どもの三人で暮らす年収三百万円のサラリーマンの場合、定率減税の廃止によって、年間約一万四千円の増税になります。さらに廃止された配偶者特別控除による増税額を合わせると、増税額は年間約五万九千円になります。

 単身者の場合、配偶者控除や扶養者控除がないため、同じ年収でも、所得税額は夫婦世帯よりも大きくなります。

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 そのため、片働き夫婦世帯と同じ年収でも、定率減税廃止による影響額は大きくなります。年収三百万円の世帯で、年間三万四千円の増税です。

 また、共働き夫婦で子どもがない場合は、単身者二人分の増税額を合わせた額になります。

 さらに、子どもを保育園に預けている世帯は、定率減税廃止によって所得税が増えるため、所得税額を基準に決まってくる保育料などの負担が増加します。

 定率減税の廃止は、働き盛り、子育て世帯に、大きな負担増を強いることになります。

消費税率 2ケタへの道

 「財政再建」を口実に、所得課税の定率減税廃止を突破口に、消費税増税に至る――。政府税調の答申は、国民負担増のシナリオを明確に描きだしました。

 これまで、石弘光会長は「そこ(定率減税)を直した後で、消費税(増税)にいくのが本来である」(九月二十八日の会見)と強調。定率減税の縮小・廃止が、消費税増税の布石であることをたびたび明言してきました。

 谷垣禎一財務相は十月二十七日、参院財政金融委員会で「二〇〇七年度から消費税(増税)をお願いする形で議論していかなければならない」と発言。財務相として、消費税増税の時期に初めて言及しました。

 石会長の発言と谷垣財務相の発言を照らし合わせれば、“〇五年度、〇六年度で定率減税を廃止”し、“〇七年度からは消費税を増税”という道筋が見えてきます。

 小泉内閣はすでに、増税と社会保障改悪で、国民に連続的に負担増を押し付けることを決めています。〇四年十月以降だけをとってみても、負担増の総額は〇六年度末時点で年間約三兆円にのぼります。

 「歳出改革」として、くらしと福祉のための予算を削り、「歳入改革」を口実に、定率減税の廃止で年間約三・三兆円もの負担増を国民に押し付ける―。その行き着く先として政府が描くのは、財界や政府税調が主張してきた消費税率二ケタ(10%以上)への道です。

「景気へダメージ 覚悟」

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 「実質で前期比0・03%減」――。内閣府が十八日に発表した新方式による七―九月期の国内総生産(GDP)の試算は、日本経済がマイナス成長となっていることを描きだしました。

 それもそのはずです。九月の全世帯の消費支出(家計調査)は、前年の同じ月と比べ、減少しています。九月の日銀短観は、一部大企業の好調さとともに、全企業数の99%、従業員数の約七割を雇用する中小企業は依然、低迷しているという事実を示しました。

 中小企業の経営難の下、雇用者所得は、三年連続で悪化。サラリーマンの給料は減り続けています。さらに、この十月から厚生年金保険料が引き上げられました。小泉内閣による国民負担増が、家計を苦しめ続けています。

 石会長は記者会見で「景気へのダメージを覚悟の上で、(日本を)財政破たんから救うために(定率減税廃止に)踏み出したい」と豪語しました。答申がもたらそうとする定率減税廃止、消費税増税の道筋が、景気にダメージを与えることは、石会長自身も認めざるを得ないところです。

 かつて橋本内閣による消費税増税や医療改悪などの九兆円の負担増(一九九七年)は、持ち直し始めていた景気を、一気に低迷させ「橋本不況」を引き起こしました。

 日本経済が減速している今、答申がもたらす負担増は、「橋本不況」以上の悪影響を日本経済に及ぼします。家計を応援する政治への転換は待ったなしです。


税制「改正」答申の要旨

 政府税制調査会が二十五日まとめた二○○五年度税制「改正」に関する答申の要旨は次の通り。

 一、基本的考え方

 わが国財政は先進国中最悪の危機的状況。財政を持続可能なものとするため、歳出・歳入両面から財政構造改革を進め、今後、所得・消費・資産などの多様な課税ベースに負担を求め、全体として税負担の水準引き上げが必要。

 二、個別税目の課題

 (1)個人所得課税

 (1)税源移譲 三位一体改革の一環として○六年度までに所得税から個人住民税への本格的な税源移譲。移譲に当たっては、個人住民税は所得割税率のフラット化が基本。個人の納税者に関係する税負担の変動にも十分留意すべきだ。

 (2)定率減税の取り扱い 現在の経済状況は定率減税が実施された一九九九年当時と比べ著しく好転。定率減税は、○六年度までに廃止すべきだ。経済への影響を考慮すると、○六年度に一度に廃止するよりも段階的に取り組むことが適当。○五年度改正でも縮減を図る必要がある。

 (3)個人住民税 六十五歳以上の非課税限度額制度は税負担の公平を確保するため制度を改組すべきだ。

 (4)金融所得課税の一体化 損益通算の拡大では金融番号制度の導入は不可欠。

 (2)消費税

 国民の理解を得る努力を払いつつ、消費税の税率を引き上げていくことが必要。税率構造は単一税率が望ましい。将来は「インボイス方式」の採用が検討課題。消費税は基本的に一般財源とすべきだ。しかし、社会保障の給付水準との関係を明確に説明することが必要だ。

 (3)相続税(略)

 (4)法人課税

 (1)法人税(略)

 (2)法人事業税 複数の都道府県に事務所を有する法人についての分割基準は見直しが必要。

 (5)国際課税(略)

 (6)酒税 酒類分類の簡素化を図り、酒類間の税負担格差を縮小する方向で早急・包括的に見直すべきだ。

 (7)地球温暖化問題への対応 環境税の是非については、国・地方の温暖化対策全体の中での具体的な位置付けを踏まえ、今後多くの論点を早急に検討。

 (8)その他 企業年金課税は、今後の年金制度をめぐる動向を勘案しつつ、特別法人税を含め総合的に検討。



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