2004年11月30日(火)「しんぶん赤旗」
中山成彬文科相が、二十七日のタウンミーティングで「従軍慰安婦や強制連行などの言葉が教科書から減って良かった」と発言したことは、アジアを侵略した過去の日本の過ちを認めたくないという、同氏をはじめ多くの自民党政治家の“本音”をあらわにしたものです。しかし、これは歴史の事実にも、政府のこれまでの公式見解にも反するものです。
日本が朝鮮や台湾などの人たちを強制連行し、従軍慰安婦にしたり強制労働をさせたことは否定できない歴史の事実です。政府も従軍慰安婦問題について、一九九三年八月、河野洋平官房長官(当時)談話を出し、「本件は、当時の(日本)軍の関与の下に、多数の女性の名誉と尊厳を深く傷つけた問題である」と軍の関与をはっきりと認め、「歴史教育を通じて永く記憶にとどめ、同じ過ちを決して繰り返さない」と表明しました。これを受けて、従軍慰安婦問題は、政府の検定制度のもとでも、中学校用の歴史教科書七社すべてで記述されるようになりました。
しかし、それを「自虐史観だ」と攻撃する「新しい歴史教科書をつくる会」の中学校歴史教科書が、二〇〇一年の教科書検定に合格。この年の検定では、その他七社の教科書でも従軍慰安婦について記述したのは四社に減り、「朝鮮などアジアの各地で若い女性が強制的に集められ、日本兵の慰安婦として戦場に送られました」と明確に記述したのは一社のみでした。ほかは「非人道的な慰安施設には、朝鮮や台湾などの女性もいた」「多くの朝鮮人女性なども戦地に送り出された」との記述にとどまりました。
中山文科相の発言は、こうした「逆流」をさらに推し進めようとするものです。教科書検定の合否を最終的に判断する権限を持つ文科相の発言だけに、とりわけ重大です。アジア諸国はもとより、歴史の教訓をくみとり、平和な日本と世界を築いていこうとする多くの国民からの厳しい批判は免れません。(坂井希記者)
(歴史教科書の検定問題について)「やっと最近になって従軍慰安婦とか、強制連行とか、そういう言葉が減ってきて本当に良かった」「極めて自虐的な、日本は悪いことばかりしてきたというのに満ち満ちていたときがあった。自虐史観に立った教育だけはしてはいけない」(二十七日、大分県別府市内でのタウンミーティングで)