2004年11月30日(火)「しんぶん赤旗」
米軍によるイラク中部・ファルージャ総攻撃開始から二十八日で三週間が経過しました。本紙が現地住民に行った電話取材やアラブ系衛星テレビの報道によって、二千人ともいわれる民間人を無差別に殺害した攻撃は現在も続いており、生き残った住民も依然として悲惨な状況に置かれていることが明らかになりました。
(カイロ=小泉大介)
「米軍はこれまでに武装勢力千人以上を殺害し、市内のほぼ全域を制圧したなどといっています。しかし、南部にはまだ相当数の抵抗勢力が存在しています。米軍の主張はウソで、死者の大半は民間人です。現在も米軍による攻撃は続いており、今後数週間は続くことが予想される状況です」
ファルージャ在住のジャーナリスト、ファディル・バドラーニ氏は二十七日、本紙の電話取材に対し、こう語りました。
同氏によれば、赤新月社(赤十字)の救援チームがやっと米軍から立ち入り許可を得て一部地域に入ったものの、激しい戦闘で負傷者を市外に運び出せずにいます。同氏は、ごく限られた地域でしか負傷者の治療や遺体の搬送ができず、水や食料が枯渇するなか、住民の多くが悲惨な状況のままでいると告発しました。
カタールの衛星テレビ・アルジャジーラは二十七日、ある民家の状況を報じました。そこには、あらゆる部分を銃撃され、真っ黒焦げとなってしまった家の中で泣き声をあげる女性の姿がありました。四十歳前後と見られる女性は、カメラに向かって叫びました。
「私たちに何の罪があるのですか。私はテロリストですか。子どもたちはテロリストですか。銃撃した後、米軍は家の中のすべてを破壊し、持ち去りました。私の家は無くなってしまいました。どうやってこれから生きていけばいいのでしょう。路上で生活しろというのでしょうか」
米軍は現在、同地への爆撃を継続するとともに、「武装勢力拘束と武器押収」を口実に、民家へのしらみつぶしの襲撃、捜索を行っています。米海兵隊現地司令官は二十六日、「市内の家屋の半分を片付けた」などといいながら、作戦の強化を表明。今後、住民の被害がさらに広がることが懸念されています。
ひき続くファルージャ総攻撃は、各地で武装勢力の蜂起と治安悪化を引き起こし、来年一月末に実施予定の国民議会選挙など政治過程への影響も深刻となっています。
国民議会選挙に関しては、すでにファルージャ総攻撃に抗議してイラクのイスラム教スンニ派有力組織、イスラム聖職者協会ら数十の組織がボイコットを決定しています。二十六日には、親米の二つのクルド系有力政党を含む十七組織が治安状況を理由に最長六カ月の選挙延期を求め、混乱が広がっています。
国土の重要な一部であるファルージャで罪のない民間人を大量虐殺しておきながら、民主的で公平な選挙など行えるわけがないとの声が高まっています。
「ファルージャでのせん滅作戦は悲惨極まりない攻撃であり、イラク国民の心に恐怖と不安を植え付けてしまいました。攻撃を支持したイラク暫定政府への不信感も高まる中、どのような選挙をしようというのでしょうか。せん滅作戦は、モスルやヒッラ、バグダッドなどにも拡大しています。選挙が実施できるような治安状況にあるとは誰も言えません」
バグダッド大学政治学部のナディア・シュカーラ教授はこう指摘しながら、さらに言いました。
「米政権が力と武力の政策をとり続ける限り、イラク人の抵抗は激しくなるだけです。イラク人は二年近くにわたる戦争と占領を通し、米軍は解放者ではなく占領者であり、そのもとではいかなる自由も民主主義もありえないことを悟っているのです」