2004年12月1日(水)「しんぶん赤旗」
厚生労働省は、現在国と自治体の負担で四十歳以上の自営業者や専業主婦を対象に実施している老人保健事業の健康診査のうち、六十五歳以上の健診などを再編して介護保険制度に組み入れることを検討しています。これで国の負担は約四百億円減る一方、介護保険料の負担は一千億円増えます。来年度の通常国会に提出を予定している介護保険制度見直し案に盛り込む方針で、関係者から強い批判の声が上がっています。
同省は介護保険制度の見直しで、介護状態になる前の人に介護予防サービスを提供するなどとした「地域支援事業」を同制度のなかに創設します。
その内容は、現在は国と自治体の負担で行っている健診や機能訓練などの老人保健事業(総事業費約九百億円、国負担三分の一)、高齢者の給食サービスや送迎サービスなどの介護予防・地域支え合い事業(同約八百億円、同二分の一)、在宅介護支援センター運営事業(同約四百億円、同二分の一)を見直し、再編成して介護保険内に組み込むものです。
新事業の総事業費は介護保険給付費の3%。〇六年度は約二千億円程度を予定しています。財源は保険料50%、国負担25%、都道府県・市町村各12・5%です。これまで公費で行ってきた事業に保険料負担を組み入れ、国庫負担を減らす一方、国民の負担をいっそう増大させるのが特徴です。
介護保険の見直しで「介護予防の重視」を掲げる同省ですが、国庫負担の削減は国の負担と公的責任を後退させることになります。
中央社会保障推進協議会事務局次長・相野谷安孝さんの話 介護予防事業のみならず健康診査まで介護保険制度に組み込むというのは大問題です。負担の転嫁という問題にとどまらず、国と自治体の責任である公衆衛生や高齢者福祉を介護保険の狭い枠内に閉じ込めてしまおうというものだからです。
厚生労働省は今回の介護保険「改革」を「社会保障の総合化」のけん引車などといっていますが、社会保障における国の責任を後退させ、社会保障を「負担なければ給付なし」の保険システムに組み替えていこうとしています。この事業にもそのことが表れています。