日本共産党

2004年12月3日(金)「しんぶん赤旗」

“軽度者が受けると自立妨げ悪化”

介護サービス切捨て根拠に疑問

現実は“介護度重いほど悪化”


表

 厚生労働省は来年の通常国会に法案を提出する予定の介護保険制度の見直しで、要介護度の軽い人の介護サービスを切り捨てようとしています。その根拠に、軽度の人の方が状態が悪化しやすいとの調査をあげ、その理由は訪問介護などの介護サービスが「かえって本人の能力の実現を妨げ」ているからだとしています。これにはかねてから“根拠があいまいだ”との批判が出ていましたが、兵庫県西宮市では違った調査結果が出ており同省の主張の根拠そのものに疑問が強まっています。

 厚労省は介護保険制度見直しに向けた「意見」を七月にまとめました。このなかで軽度者のサービス見直しの唯一の根拠にあげているのが、日医総研と島根県がまとめた調査(「介護サービスの有効性評価に関する調査研究」)。二〇〇〇年十月に要介護認定を受けた人の二年後の介護度が重度化した割合を調べた結果、要介護度の一番軽い要支援で48・9%、次ぐ要介護1で34・8%が重度化し、要介護2以上に比べて重度化の割合が多いとしています。

 ところが西宮市が同時期におこなった調査では、重度化した割合が一番高いのは要支援(35・3%)であるものの、要介護1(29・5%)の重度化の割合は、要介護2(30・4%)、要介護3(29・9%)に次いで四番目でした(表)。

 さらに要介護度の「重度化」と「死亡」を合計した“悪化”の割合でみると、要介護4(58・1%)、要介護3(54・4%)、要介護2(52・6%)の順に高くなっています。要介護度が一番重く「重度化」が表れない要介護5を除き、要介護度が重いほど“悪化”する割合は高い傾向です(同)。

 日医総研の調査もこの方法で検討すると、「重度化」と「死亡」の合計が一番多いのはやはり要介護4でした。

 この問題について厚生省(当時)の介護支援専門員支援会議のメンバーも務めた、国際高齢者医療研究所所長の岡本祐三氏は、『月刊介護保険』七月号で日医総研の調査結果とともに西宮市の調査を示し、「基本的には『要介護度が高くなるほど悪化率も高い』という解釈が正しいのではないか」と指摘。「いずれにせよ、この程度の分析結果をもとに、介護サービスの利用抑制を提唱するには時期尚早ではないか」と、厚労省の見直し方針に警鐘を鳴らしています。



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