2004年12月4日(土)「しんぶん赤旗」
米軍がイラク中部ファルージャにたいする総攻撃を開始して四週間近く、数千人の住民の命を奪った攻撃は終わる気配をみせていません。本紙が二日行った現地住民や救援活動にあたるイラク赤新月社メンバーに対する衛星電話取材からは、現在も続く攻撃の実態が浮かび上がってきました。(カイロ=小泉大介)
赤新月社は十一月末に市内に立ち入ることが許され、市中心部に救援センターを設けましたが、活動は極めて制限されています。同社メンバーの一人は、米軍に氏名がわかると殺害される恐れがあるとして、匿名を条件に怒りの告発を行いました。
「いまも市南部を中心に米軍が激しい攻撃を行っており、私たちの活動拠点のすぐそばまで爆撃はされている。住民の状況は悲惨の一語だ。米軍は立ち入りは許したが、援助活動は同軍が同行する範囲に限っている。米軍は女性や子どもたちが街の外に避難することも許さない。食料や水などの援助が必要な人々に私たちの手はまったく届いていない」
このメンバーは、ファルージャでは数千人が殺害された上に、いまも多数の負傷者が手当てを受けられず、死者はさらに増える恐れがあると強調。「昨日は、医師を乗せた救急車が米軍に銃撃された」と証言した後、「あっ、たったいま、すぐ近くで爆撃があった。ここから百メートルくらいの地点で煙が上がるのが見える」と叫びました。電話口からは、救援センターに集まった住民の悲鳴にも似た叫び声が聞こえました。
救援センターに集まった住民の一人、大学生のアブデルラフマン・ムハンマドさん(24)の証言はさらに衝撃的です。
「通りにはいまも数百の遺体が放置されたままだ。米軍は私たちが遺体を運び出し埋葬することさえ許さない。遺体は腐りかけており、衛生状態は最悪だ。このままではファルージャ全体に疫病がまん延する危険性がある」
「米軍は爆撃で街のすべてを破壊しつくしたが、それは現在も続いている。米軍はいま、民家をしらみつぶしに捜索している。捜索が終わった後、米軍は家の中に爆弾を仕掛け、爆発させた。もうファルージャには人が住めるような家はほとんどない」
ムハンマドさんは「多くの罪のない女性や子どもを殺し、家屋を破壊しつくしたブッシュ米大統領には人間性のかけらもない。米軍はテロリスト掃討を攻撃の理由にしているが、彼らがやっているのはファルージャの完全な破壊だ」と深い怒りを表明し、「どうかこの現実を世界の人々に知らせてください。米国民はとても信じることができないだろう、これが現実だ」と訴えました。
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赤新月社 赤十字社に相当するイスラム教諸国の組織。赤十字は、スイス人実業家アンリ・デュナンの提唱で一八六三年に設立され、主に、戦時、平時の傷病者の救護や災害時の人道支援などを実施。赤十字社はその各国ごとの組織です。赤十字の標章はスイスの国旗の色を反転した白地に赤の十字形ですが、イスラム諸国は十字軍を連想させるこの標章を嫌い白地に赤の三日月を使用しています。