日本共産党

2004年12月4日(土)「しんぶん赤旗」

「九条の会」講演会 なぜ人々は集まるのか

“ネットで知った”“授業で聞いた”…

“憲法を守ろう”

参加者と講演者が共有


 七月二十四日の東京での発足記念講演会を皮切りに、大阪、京都、仙台、札幌、那覇と続いてきた「九条の会」講演会。参加した人は、一万八千人を超えました。憲法問題という“固いテーマ”の講演会に、なぜ人々は足を運ぶのでしょうか――。


写真

大阪 4000人参加盜満員で会場に入れず外で講演をきく人たち=9月18日、中之島中央公会堂

 「すごい人ですよ。いっぱいです」。一日の沖縄講演会で、携帯電話で興奮気味に連絡をとるマスコミの記者。通路までいっぱいとなった会場の熱気には息苦しさも覚えるほどでした。

 主催者の「予想」をはるかに上回る参加者数と会場の熱気―「九条の会」講演会に共通する風景を象徴していました。

参加者から熱気

 大阪では、会場前の広場にきびしい残暑のなか二千人もの人たちがひざをかかえ、じっとスピーカーに耳を傾ける姿に、事務局関係者が「安保闘争のようだ」と感想をもらしました。京都や札幌では、会場や気候条件から、帰ってもらわざるを得なかった人が数百人にものぼりました。

 「あふれるほど集まり、二時間も立ち見になった人もいたのに、怒らず喜んで帰るような集会は初めてだ」(札幌)「三千も資料をつくる必要があるのかという声もあったが、それを大きく超えたし、外でもほとんどの人が最後まで帰らずに聞き入った」(仙台)など、それぞれの事務局関係者も一様に驚きを隠しません。

 マスコミが事前にもほとんど報道しないなか、チラシをみてきた人、インターネットで調べてきた人、大学の授業で知った学生など、参加のきっかけはさまざま。「広範に開かれた憲法学集会が力になった」(仙台)など、地道な取り組みが土台になったところもあります。

 仙台で講演した井上ひさしさんは、記者会見で「九条はなくしてはいけないと思っていて、それを今まで外に出さなかったけれども、この機会に表現しようという人が大勢いらっしゃるということは素晴らしい」と語りました。

 京都講演会後の記者会見では、大江健三郎さんが「草の根」の広がりに、「驚いています」と語りつつ、「これまで、それぞれの位置で憲法問題に取り組んできた人たち、そういう人たちが一つに集まる状態、場所をつくり出した」と指摘しました。

こん身の訴えに

写真

京都 2500人。3氏の講演に拍手する参加者=9月25日、京都産業会

写真

仙台 4500人。会場前の公園で、スピーカーから流れる講演に聞き入る参加者たち=11月21日

写真

札幌 4000人。会場のロビーで食い入るように話を聞く人たち=11月25日、札幌市民会館

写真

沖縄 2000人。満員の会場で熱心に3氏の話に聞き入る人たち=1日、那覇市

 十一月二十五日の札幌講演会の後、沖縄講演会(十二月一日)を準備する実行委員会関係者のもとに、奥平康弘氏からファクスが入りました。「札幌講演会は一味違う大変な盛り上がりだった」

 札幌では、ホールの通路や階段、そしてロビーを埋め尽くした人々が、講演の間、ノートと鉛筆を握りしめ必死でメモをとる姿が本当にたくさん見られました。ファインダー越しに見つめたベテランの同僚カメラマンは「前のめりになって耳に神経を集中させている。表情がちがう」と語りました。

 講演会の特徴は、参加者の数の多さだけではありませんでした。どの会場も、これまでにない真剣な空気に包まれていました。京都講演会で現地の運営にあたった一人、京都YWCAの黒木順子さんは、「講演者の魅力も重要な要素」と指摘。「ただ九人の方が有名だという“肩書”だけでなく、それぞれの方が平和憲法への本当に熱い思いをもっている。こん身の訴え、迫力は並大抵のものではありません」と語ります。

 逆に、参加者の熱意に、講演者が励まされたと語りかける場面もありました。

 京都の会見で、大江さんは、「憲法九条を守っていこうということを非常に強く感じ、聴衆のみなさんと共有することができました。私はものを書き始めて今が一番ピークであるような感じがしています」とさえ語っています。

 取材をしていても、参加者の熱い思いを感じることがありました。札幌では会場の市民会館前の気温の電光掲示で、夕方五時にはすでに三度前後の表示。そこに多くの高齢者を含む二千人近い人々の列ができたのです。熱い思いによるという以外、説明がつきませんでした。

 「部活も大事だけど、憲法を守るためにこんなにたくさんの人が集まっていることを見せたかった」(仙台)と家族ぐるみで参加した人たち。沖縄講演会には多くの青年が参加したのが特徴でしたが、その多くが“米軍ヘリ墜落事故、イラク戦争など、平和と憲法の問題を考えるためにやってきた”と答えたのが印象的でした。

マスコミの敗北

 「『九条』の重要性強調 小田実氏ら識者講演」。二日付の沖縄タイムスは、沖縄講演会を一面トップで報じました。

 しかし、全国紙は東京版ではどの講演会も黙殺。地元版でも、わずか一段のベタ記事という例も少なくありません。講演会の熱気とマスコミの報道の冷たさは対照的です。

 井上さんは、仙台の会見で「この集まりを報道しないというのは、いずれマスコミの敗北になりますよ」とのべました。「毎日」は講演会から一週間以上たって、北海道版で三段見出しで報じました。

 自民党憲法調査会が改憲大綱原案を発表するなど、強まる憲法改悪の動きの中、「九条の会」の講演会は確実に、憲法守り生かそうといううねりを広げています。

 中祖寅一、藤田健記者



もどる
「戻る」ボタンが機能しない場合は、ブラウザの機能をご使用ください。

日本共産党ホームへ「しんぶん赤旗」へ


著作権 : 日本共産党中央委員会
151-8586 東京都渋谷区千駄ヶ谷4-26-7 Mail:info@jcp.or.jp