2004年12月4日(土)「しんぶん赤旗」
日本共産党の志位和夫委員長が三日おこなった党国会議員団総会でのあいさつ(大要)は次のとおりです。
みなさんご苦労さまでした。閉会にあたって、ごあいさつを申し上げます。
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私は、開会日のあいさつで、「自民党・小泉内閣が、内外のどの問題に対しても、まともな対応能力を失ってきている」ということをのべましたけれども、この国会を振り返ってみまして、まさに、自民党・小泉内閣のゆきづまりがいよいよ深刻となっていることが浮き彫りになったというのが、今度の国会の大きな特徴だったと思います。
それは、この国会の焦眉(しょうび)の課題となった二つの問題―イラクへの自衛隊の派兵問題、「政治とカネ」の問題―この二つの問題に対して小泉首相がとった態度に象徴されていると思います。
この二つの重大課題のどちらに対しても、首相のとった態度というのは、国民の前でまともな議論を回避する、国民に対する説明の責任を放棄する、そして、これまでみずからがとってきた立場や方針を真剣に自己検討するという態度はまったくないというものでした。
しかし、この国会はそういう態度で乗り切れたとしても、“こういう政治に先はない”ということを、私は、はっきりといいたいと思います。
とくに、イラク派兵にこの期に及んで固執するということは、ファルージャへの無差別殺りく作戦で「六千人以上の死者」とも伝えられた恐るべき戦争犯罪を引き起こした米軍の共犯者として、自衛隊がいよいよ無法で危険な立場に立たされることになります。
先日、日比谷野外音楽堂で緊急集会が持たれ、三千人の参加で、緊急の集会としては大きく成功し、平和のエネルギーが沸き起こりつつあるということを感じましたけれども、こういう理性の声が広がりつつあるということは本当に心強いことです。
これから、自衛隊の即時撤退を求めるたたかいが非常に大事な局面を迎えてきます。国会は閉会になりますけれども、全国各地でこのたたかいを大きく前進させる先頭にたって、わが議員団が奮闘するという決意を固めあいたいと思います。(拍手)
こうした国会のなかでの日本共産党議員団の奮闘ですけれども、私は、短い会期であり、そして制約されたいろいろな条件もありましたが、特筆すべきいくつかの成果をあげることができたと思います。
第一は、国民の苦難と要求にこたえた活動であります。
新潟県中越大震災、各地の台風と豪雨災害の被災者の方々への救援と支援の活動を、われわれは党活動の原点と位置づけて全力をあげて取り組みました。ボランティアや救援募金の活動をすすめ、被災者のみなさんの要望を直接うかがい、自治体の方々とも連携を強めて、国政を一歩でも二歩でも動かすために全力をあげました。その結果、次のような一連の重要な成果をあげたことを確認できると思います。
―仮設住宅の設置はコミュニティー維持に配慮する。不十分ではありますが、庭先にも簡易住宅が設置されました。こういうことが実現することになりました。
―医療スタッフを緊急に配置し、破壊された地域医療機関再建のための公的支援を行うこと。これも実現する方向です。
―住宅の被害認定の基本は、住居機能が損なわれているかどうかにあることをあらためて政府に認めさせました。このことで実態に即した被害認定への足掛かりをつくることができました。
―水害被害に対しても、床上浸水家屋に対しても被災者支援法の適用がはかられることが明確にされました。これも、関係者の方々には朗報であります。
―住宅本体の再建への支援や、産業再建への支援で、自治体が独自の措置をとった場合には、国が財政的に支援するという約束を、政府にさせました。
とくに、住宅本体の再建への公的支援(個人補償)という問題は、われわれは阪神・淡路大震災にさいしても一貫して要求しつづけてきたことですけれども、この一連の災害にさいしての現地の被災者のみなさんの声、自治体の声、わが党の国会での論戦などの力があわさって、小泉首相もこの問題を「検討課題」といい、防災担当大臣も「自治体への支援」を言明したことは重要です。自治体の動きとしても、新潟県知事や被災された各市町村長さんたちがそろって、これを国の制度でやるよう強く要望するところまで広がり、前進しました。
これをぜひ実らせるために、ひきつづきわが党の重要課題として取り組んでいきたいと考えております。
「国民の苦難と要求があるところ日本共産党あり」という活動で、私たちが果たした役割というのは、短い国会でありましたけれども非常に重要なものであって、今後もおおいにこの精神をもって奮闘したいと考えます。
第二は、いまの政治のゆがみを大本からただす立場にたった論戦であります。わが党はアメリカいいなりと大企業中心という政治のゆがみを大本からただす政党です。そういう党ならではの論戦を展開した、それが光ったと考えます。
アメリカいいなりの政治のゆがみをただすという点では、イラク戦争の「大義」とされた「大量破壊兵器」問題での首相のごまかしの論理を打ち砕いた論戦、米軍のファルージャでの無差別攻撃という国際人道法に反する戦争犯罪を支持した首相の責任の重大さを浮き彫りにした論戦、沖縄の米軍ヘリコプターの墜落問題の本質をつき、米軍基地国家の現状を続けていいのかということを根本からただした論戦。どれもアメリカいいなりの政治のゆがみを根元から断つという党ならではのものであります。わが党の真価が発揮された論戦だったと思います。
大企業中心の政治のゆがみをただすという点では、政府が財界と一体に、民主党も引き込んで進めようとしている大増税路線―来年度と再来年度で定率減税を縮小・廃止し、そして二〇〇七年から消費税を増税するという、二段階の大増税路線を正面から告発したのは日本共産党だけでした。これは今後のたたかいを展望してみましても、たいへん値打ちのある論戦だったと考えています。
私たちは、大企業の減税を続けたまま庶民増税を押しつけることにいかに道理がないか、あるいはいまの経済の現状に照らしてどんなにこれが破滅的なものか、その一つひとつをただしてきました。わが党がこの問題を先駆的に提起するなかで、いま与党のなかからも、政府の経済財政諮問会議のなかからも、大増税路線への懸念や批判が広がるなど、相手の側からもこの道を進むことに対する危ぐの声が起こってこざるを得ないという状況もあります。
先日、増税反対の広範な人々が結集したシンポジウムも開かれましたが、大増税路線に反対するたたかいは、いよいよ重大な場面を迎えることになりますから、ここでもおおいにたたかいの先頭にたって頑張ろうではありませんか。
第三に私がのべておきたいのは、日本外交の重大な課題に対して、わが党が責任ある態度を貫いたという問題です。
一つは、北朝鮮問題です。この間、日朝実務者協議が行われて拉致問題が協議され、北朝鮮から資料が提出され、政府がその問題点の精査を進めるという事態の展開がありました。そのなかで与野党の一部から北朝鮮に対する「制裁」論を前面に押し出した主張もなされるという状況が起こりました。
こうしたなかでわが党は、衆参の国会論戦のなかで、「制裁」論というのは拉致問題の解決にとってもその扉を閉ざしてしまうことになる。それから、六カ国協議で努力が払われている核問題の解決にとっても逆流をもたらすものでしかない。このことを明らかにし、いま重要なことは、拉致問題の解決のためにも、核兵器問題の解決のためにも、交渉を継続し、交渉のなかで問題を解決する努力をはかることであるということを堂々と主張しました。これは私は重要な意義を持つ態度表明であったと思います。
もう一つのべますと、今日、最終日になりまして「日米交流百五十周年を記念し、日米関係の増進に関する決議」(案)なるものが、衆参で突如として提起されてきました。
私たちは、百五十周年を祝賀すること自体に異議はありませんけれど、この決議案の文案を見ますと、一般的な祝賀決議になっていません。端的にいえば、“日米軍事同盟絶対”という現状を無条件に肯定しています。「世界の平和と繁栄のために緊密に協力している」とか、「アジア・太平洋地域の平和と安定に大きく寄与している」とか、いまの現状を全面的に肯定しています。
さらに、今後とも日米関係をこの線で進めるんだということをいっています。「今後とも日米両国が、これまで培われてきた信頼関係に基づくパートナー」としてやっていくんだ、今後とも軍事同盟体制を続けることを内外に宣言している文書です。
これが最終日になって出てきて、自民党、公明党、民主党も加わって、決議の形で押しつけるというのは、まったく異常なことだと思います。
いまの日米関係を考えてみましても、日米軍事同盟が、まさにイラクの問題でも、きわめて無法で危険な役割を果たしているのは明りょうです。それを全面的に肯定し今後もこの路線でいくんだということがこういう形で出てきた。これに対してわが党が、いまのべた論拠を示してきっぱり反対を貫いたということは、当然であります。
北朝鮮問題、日米関係と、問題によって性格はそれぞれ異なったものがありますが、どんな外交問題でも、私たちがこの国会で提起されてきた問題に対して、理性的で冷静で責任ある立場を貫いた。ここにもわが党ならではのかけがえのない役割が発揮されたということを確認しておきたいと思います。(拍手)
国会は今日で閉会になりますけれど、たたかいは続きます。閉会中にもいろいろな国政上の重大な争点が提起されてきます。イラク問題、来年度予算案の編成、年金改悪の問題、介護制度の改悪、「三位一体」の名による地方自治の切り捨てなど、たたかいの焦点となる課題は山積みされています。
一方で、憲法改悪反対のたたかいをみますと、「九条の会」の講演会が各地で大成功するなど、大きな平和へのうねりが沸き起こっています。先日は沖縄で開催された講演会が大盛会で、沖縄タイムス(二日付)の一面トップで「『九条』の重要性強調」と報道され、大江健三郎さん、小田実さん、奥平康弘さんの発言が、見開きで紹介され、社会面にも「九条の砦 今こそ守りたい」「改憲に危機感 超満員」。こういう記事が出ています。
沖縄の声といま起こっている平和の流れが本当に一致しているということを実感するような記事であります。ここでたいへん大きなエネルギーが広がっているというのは大きな希望です。このたたかいでも、来年にさらに大きな前進が期待されることはいうまでもありません。
議員団の全員が、この年末・年始の時期に、あらゆる問題で有権者の広い方々と結びつき、その要求にこたえ、たたかいの先頭にたって奮闘する。そのなかで強く大きな党づくりのためにも力をつくす。そのことを誓いあおうではありませんか。また来年元気でみなさんが顔をそろえることを願って、私のあいさつといたします。(拍手)