日本共産党

2004年12月6日(月)「しんぶん赤旗」

'05東京都議選

「日の丸・君が代」の強制

都教育委員会が都立高に押しつけ

自・公・民が一体で推進


 東京都教育委員会が学校に「日の丸・君が代」を強制している問題でいま、東京の教育現場では深刻な事態が起きています。この問題で各党は都議会でどんな態度をとってきたのか――。

 (東京総局・室伏敦記者)

 十月に創立記念日を迎えたある都立高校の男子生徒は「先生が処分されるから、僕は『君が代』で立つよ」と母親に語りました。都教委の「日の丸・君が代」強制が、子どもの心に重くのしかかっています。

正面にかかげる

 都教委は昨年十月、卒業式や入学式などを、「日の丸」を正面に掲げ、「君が代」を起立斉唱する、卒業証書は壇上で渡す形式で開けと一方的に決め、全都立高校に押しつけました。

 多くの都立高校ではこれまで、生徒会に実行委員会をつくるなどして半年以上前から卒業式を準備。卒業生と在校生が向かい合ってエールを送りあったり、卒業生の思いのこもった作品を飾ったり、各校で創意ある形で開かれていました。

 それを都教委が一片の通達でがんじがらめにしたのです。

 当時、板橋区内の都立高校で卒業式の準備を進めていた高校三年男子は「卒業式は僕たちのおとなへの第一歩。自分たちで物事を決める力があるから卒業できるのでしょう。その卒業式をおとなが勝手に決めるのはおかしい」と語りました。

 都教委の方針は、障害のある子どもたちにも壇上に上って卒業証書を受け取れなどと強制。生徒と同じフロアで証書を渡した昨年までなら自力で受け取れた子も、今年はできなくなりました。約百万円かけて会場の床から壇上までスロープを設置した学校もあります。

行政が市民監視

 東京都教育委員会の「日の丸・君が代」強制で処分された教師は二百四十八人。八人が再雇用の取り消しなどで職を失いました。他に六十七人の教師が「注意」や「厳重注意」を受けました。

 「歌う歌わないで君たちには内心の自由がある」と生徒に説明しただけで「厳重注意」とされた教師や、大勢の生徒が「君が代」を起立斉唱しなかった責任を問われた例もあります。

 都教委が派遣した職員が卒業式での保護者の起立状況まで監視していたことも、市民団体の情報公開請求で判明。公開された資料には「保護者■■のみ不起立」(■は非開示)などと行政が市民を監視していた不気味な記述もあります。

 憲法が保障する思想信条の自由を踏みにじる行為を教育委員会が学校で進める異様な事態に、保護者、教職員をはじめ幅広い都民から批判、懸念の声が上がっています。

教壇にもどすな

 都議会で自民、公明、民主各党は都教委の「日の丸・君が代」強制を支持し推進してきました。

 「(『君が代』を起立斉唱しなかったことを)反省もしていないものを教壇に戻すことはあってはならない」

 こう要求したのは自民党・古賀俊昭都議=日野市選出=(六月八日、本会議代表質問)です。同都議は「君が代」を起立斉唱させるため「学習指導要領や通達に基づいて児童生徒を指導することを盛り込んだ職務命令を出(す)」ことを求めました。都教委はこれにこたえ、九月の都立高校校長連絡会で「君が代」斉唱を指導するよう職務命令を出すことを指示しました。

 公明党も「国歌斉唱時に起立をしないなど、(都教委の)実施指針に従わない教員がいる場合、厳正に対処すべき」だと要求(野上じゅん子都議=葛飾区選出=、二〇〇三年十一月十八日文教委員会)。「一部で宣伝されているような強制はなかった」(中嶋義雄都議=世田谷区選出=〇四年三月二十五日予算特別委員会)と強制の事実をなきものにしようとしています。

露払い役の民主

 「日の丸・君が代」強制の根拠となったのが〇三年十月二十三日の都教委通達と「実施指針」(「入学式、卒業式等における国旗掲揚及び国歌斉唱に関する実施指針」)です。民主党はその露払い役をしました。

 土屋敬之都議=板橋区選出=は〇三年七月二日の都議会本会議で「国歌斉唱時に起立もしない教職員がいまだに存在する」「式典運営指針などを制定すべき」だと要求。「指針」はその三カ月後に出されました。

 同都議は来賓として出席した都立高校の卒業式で、「君が代」を起立斉唱しない生徒たちを「立ちなさい…立ちなさい」と怒鳴りつけました。それだけでなく、都議会で「同様の事例があれば学校名を公表すべきだ」(三月十六日の予算特別委)と要求したのです。


日本共産党都議団 内心の自由守れと論陣

 日本共産党都議団は、都教委の「日の丸・君が代」強制と正面から対決。子どもたちと教職員の思想・信条の自由を守る論陣を張っています。

 そねはじめ都議は「都のやり方は学習指導要領はもちろん、『日の丸』『君が代』を強制しないという政府の答弁や文書さえ逸脱し、内心の自由を侵し、特定の価値観を押しつける」ものと批判し、「指針」の撤回を要求(〇三年十一月十八日文教委)。

 大山とも子都議は「教員の処分まで振りかざして生徒の心を縛りつけ、『君が代』を起立、斉唱させるのは、明らかに生徒自身の良心の自由を侵す憲法違反」(〇四年六月八日本会議代表質問)と厳しく批判しました。


共産党以外期待できない

 「教育を壊すな! 市民と教職員東京ネットワーク」代表委員の一人、鈴木淳さんの話 「日の丸・君が代」強制では都議会の自民党も民主党も変わりありません。公明党も一緒になって強制を進めています。この問題の元凶は石原都知事ですから、知事に従っている政党には期待できない。現状では「内心の自由」を守ることについて、政党では日本共産党以外に期待できないと思います。

 「日の丸・君が代」とは 「日の丸」は日本がアジアを侵略したときの旗印として使われました。「君が代」は「天皇の治める時代が永遠に続くように」というもの。いずれも平和・国民主権のいまの日本にはふさわしくありません。

 「国旗・国歌法」案を審議した一九九九年の国会で当時の小渕恵三首相は「子どもたちの内心にまで立ち入って強制しようという趣旨のものではなく」(七月二十八日、参院本会議)と答弁しています。

 文部科学省の学習指導要領も、「日の丸」の掲示や「君が代」の斉唱の仕方を定めていません。



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