日本共産党

2004年12月7日(火)「しんぶん赤旗」

ファルージャの女性は見た

米軍が立入拒否/遺体放置/衣服ボロボロの人々…


 イラクの首都バグダッドに住む主婦のナワル・ジャーセムさん(45)。米軍が総攻撃をおこなう中部ファルージャ出身のジャーセムさんは、ファルージャを脱出し、バグダッドに避難している父親や叔父とともに今月二日、故郷の破壊状況を自らの目で確かめるためファルージャを訪ねました。米軍が市内立ち入りを許しませんでしたが、故郷の惨状を垣間見た無念と怒りの思いを本紙の電話取材にたいし語りました。(カイロ=小泉大介)


検問所に陣取る米戦車、狙撃兵

 私たちはイラク赤新月社の緊急援助隊メンバーとともにファルージャ入りを試みましたが、検問所付近に陣取る多数の米軍戦車と狙撃兵たちはそれを許しませんでした。

 米軍は遺体を包む布百二十枚とわずかなパンや水を積んだだけの赤新月社の車両にたいしても「不審物があるのではないか」などといい、一日がかりの厳重なチェックをおこなった上でやっと許可をだす始末でした。

 彼らは住民が街に帰ることも、市内から外に出ることも許しません。私が今後、ファルージャとの連絡を取るために住民に託そうと用意した携帯電話も没収されてしまいました。米軍はファルージャ内の情報を外に漏らさないために完全な統制をおこなっているのです。

6000家族が現在も家に残る

 市内には入れませんでしたが、同地の状態はかなりの程度わかりました。通りにはいまだに多数の死体が放置されたままです。米軍に、なぜ遺体の搬送を許可しないのかと聞いたら、彼らは「身体に爆発物が巻きついている可能性がある」などといいました。

 私たちは押しつぶされた家々、破壊された通り、そこにたまった汚水など、壊滅的な状況を目の当たりにしました。ひきつづく攻撃のためにいまも多数の市民が家の中に残っています。赤新月社関係者によると、現在も約六千家族が残っています。私たちの耳にも、爆撃の音や家屋が崩れる音が聞こえました。

 脱出しようと検問所付近に集まった女性や子どもの様子は悲惨きわまるものでした。衣服はボロボロで、空腹やのどの渇きから言葉を発することもできない状況でした。ファルージャ住民が渇きから汚水を飲み死に至っている一方で、米兵はミネラルウオーターを当然のように飲んでいました。住民の間では下痢がまん延していますが、その薬もほとんどありません。市内ではほんの数台の救急車が病人やけが人の治療のために活動しているだけです。

冬始まるイラク破壊だけつづく

 イラクではいま、冬が始まっています。しかしファルージャ住民は食料や水に加え、暖を取る燃料もなく、厳しい寒さにさらされています。私たちの国には豊かな石油があったはずなのに、ファルージャ住民には何もありません。米軍はイラクから石油も取り上げ、そのうえこのような破壊をおこなっているのです。

 私たちは戦争で米軍がやって来たとき、彼らはイラクを解放し自由をもたらしてくれると幸せな感情を持ったものです。しかし彼らは何もしなかった。それどころかファルージャ住民は米国のいう「自由」「民主主義」のためにこれだけの無実の住民の死という代償を払っているのです。私たちが見たファルージャの光景は、米軍がつくりだした巨大な墓場でした。



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