日本共産党

2004年12月8日(水)「しんぶん赤旗」

陸自幹部の改憲案

米軍との海外作戦、軍事国家構想

自民の「九条」狙い裏付け


 自民党「憲法改正草案」起草委員会の中谷元委員長(元防衛庁長官)が陸上自衛隊の現役幹部に改憲案の作成を依頼していた問題は、自民党の狙う改憲の標的が九条改悪にあることを改めて浮き彫りにしました。

「大綱」原案と同じ

 陸自幹部の改憲草案は、軍隊の設置と集団的自衛権の行使、「国家緊急権」の創設、軍事裁判所の設置や国民の国防義務などと明記。自衛隊を正規の軍隊とした上で、海外派兵も米軍との共同作戦も自由にできるようにし、いざとなれば国民の基本的人権も制限する軍事国家構想です。

 重大なのは、この改憲草案の内容が、十一月十七日に自民党憲法調査会が発表した「改憲草案大綱」の原案にすべて含まれていることです。

 自民党の改憲策動の最大の狙いが九条を破壊して、軍事当局の使いやすい憲法にすることにあることを、明確に示しています。

 中谷氏は、改憲草案作成の依頼を「私的な勉強のため」などとし、個人的な関係にもとづくものと釈明。細田博之官房長官も「あくまでも個人間の依頼」とかばっています。

組織的関与の疑い

 しかし、中谷氏が自民党の改憲草案作成の要にある人物で、しかも陸自幹部の改憲草案は、党憲法調査会の場に、資料として提出されていました。「私的勉強」の範囲にとどまらず、自民党の改憲案作成作業に影響を与えていたことは明らかです。

 防衛庁内でも「たった一人でつくったとは思えない」(幹部)との声が出るなど、自衛隊の側の組織的関与も疑われています。

 六日の記者会見で防衛庁の守屋武昌次官は、問題の文書が「どんな文書なのか確定に時間を要する」と述べました。それは、事情聴取に対して陸上自衛隊が事務部門である内局に提出した文書には、作成者とされる二等陸佐の名前や、陸幕防衛部防衛課防衛班という所属先の記名がなかったためです。陸上自衛隊が組織的関与の疑いを免れようと、事実を隠ぺいしている疑いさえもたれているのです。

国民主権から逸脱

 自衛隊は世界第二位の軍事費が注ぎ込まれている実力組織であり、不正にその実力が使われれば権力をくつがえす力さえ持っています。だからこそ、その自衛隊幹部が改憲案を作成したことに、「世間は薄気味悪さを覚えた」(「東京」七日付社説)のであり、防衛庁幹部からも今回の事件について、「クーデターの発想だ」(沖縄タイムス、五日付)という報道も出るのです。

 憲法に違反する自衛隊の立場から、自ら自由な活動ができるようにするための改憲提案がなされるなどということは、立憲主義、国民主権から容認できない、常軌を逸した事態です。

 「専門家の意見を聞くことは悪いことではない」(小泉首相)などという発言自体、“軍隊に改憲の相談をしても問題はない”とするもので、見識を全く欠いているとしか言いようがありません。中祖寅一記者



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