2004年12月9日(木)「しんぶん赤旗」
【カイロ=小泉大介】日本政府は九日の閣議でイラクへの自衛隊派兵の一年間の延長を決定する見通しです。自衛隊が駐留する南部サマワ住民をはじめ、いまだに戦争と占領に苦しむイラク人は、本紙が行った電話取材で、自衛隊派兵延長に対する厳しい批判の声を上げました。
派兵延長にイラク人は |
サマワで弁護士活動するセリム・ハスーンさん(34)
イラク復興を理由に駐留する自衛隊がなぜ、軍服を着て、戦車で移動しなければならないのでしょうか。それだけを見ても復興は口実で、自衛隊も占領に加担する米軍やその他の外国軍と変わらないことは明らかです。
日本の首相はファルージャ攻撃を支持しましたが、それは、自衛隊の占領軍としての本性を自ら暴露したも同然です。「イラク復興」のためという口実は、米軍が戦争と占領の口実にしている「自由」「民主主義」のスローガンと大差ありません。
サマワの全体的な雰囲気は、自衛隊の駐留継続に反対です。自衛隊駐留で生活が少しは良くなったと感じている住民は一握りにすぎません。これがサマワで自衛隊撤退を求めるデモが行われるようになった背景にあるのです。自衛隊員に対し手を振ってあいさつする住民も今はほとんどいません。
私たちは日本や中国、インドネシアやその他のアジアの国々に親近感を持ってきました。しかしいま、アジアの他の国と違い、米国の政策を支持する日本はイラクと中東で自ら孤立を深めています。
サマワ在住の無職、ラヒム・アブデルカリームさん(27)
最初に日本の人々がサマワにやってくると聞いたとき、私たちは大きな希望を持っていました。しかし、自衛隊がサマワでやっていることはなんでしょうか。学校のペンキの塗り替えや道路の補修はサマワ住民にはできないとでもいうのでしょうか。われわれをばかにしているとしか思えません。他の外国軍に守られながらおこなう「復興支援」にも驚かざるを得ません。日本では技師や医師は戦車に乗り武器を持って仕事をしているのでしょうか。
私を含め多くの住民が失業状態に苦しんでいます。旧サダム(フセイン元大統領)時代でもこんなことはありませんでした。生活状況は悪化しており、住民の六割から七割は自衛隊の存在に反感を持っています。多くの住民が、自衛隊はサマワで米軍のための基地を建設しているのではないかと疑っているほどです。
日本も米国による原爆投下と占領に苦しんだはずです。自衛隊はその国民の声を聞き、イラクから即刻出て行くべきです。
サマワ在住のタクシー運転手、フサーム・ムハンマドさん(26)
自衛隊が「イラク復興」を掲げてサマワに駐留して一年がたちましたが、ここではいまだに失業率80%という状況のままです。私は職業柄、多くの住民と毎日話をしますが、自衛隊に対する不満や怒りが日々高まっています。
日本政府はサマワの治安は安定していると言っているそうですが、それならばなぜ、日本ほどの高度の技術を持った国が、一年もかかってほとんど何も状況を改善できないのでしょうか。
サマワでは「イラク復興」というのはウソであり、自衛隊は結局、米軍に奉仕するために駐留しているのだという受け止めが強まっています。日本の首相は米軍のファルージャ攻撃を支持すると言ったそうですが、これも住民の感情を悪化させる原因となっています。
私は、自衛隊の存在が、日本とイラクやアラブとの良い関係を台無しにすることを心配しています。
イラクの政治評論家、ワリード・アルズバイディ氏
自衛隊駐留延長は、日本政府の異常な対米従属姿勢を改めて明確にしました。イラク人は数十年先も、今回の決定を忘れることはないでしょう。
自衛隊による「イラク復興」という駐留の口実のウソも完全にはっきりしました。「復興」というのであれば、なぜもっとも破壊の激しいファルージャやナジャフで支援にあたらないのでしょうか。日本政府がやっていることは全く逆で、米軍によるファルージャ攻撃を支持しました。これは、イラク市民の殺害に手を貸している以外の何物でもなく、自衛隊が占領軍の一部であることもはっきりしたのです。
自衛隊の駐留延長は米国やこれに従うイラク暫定政府からは称賛を受けるでしょうが、イラク国民の受け止めは違います。われわれには、日本がイラク人の殺害、イラクの破壊に、より積極的に参加していくためのステップとしてしか受け止められません。
駐留延長は、イラクやアラブにおける日本の将来の経済的利益も危機にさらしています。イラクでは今でさえ、日本製品をボイコットする動きが出ているのです。
私は、日本が真に民主主義国家であるならば、小泉首相は将来、(日本の国益を台無しにした罪で)裁判にかけられなければならないだろうと考えます。