2004年12月20日(月)「しんぶん赤旗」
米軍がイラク中部ファルージャにたいする総攻撃を開始して一カ月以上がたちました。一般メディアではほとんど報じられていませんが、攻撃は現在も続き、何の罪もない住民の犠牲が増え続けています。しかもこの攻撃は、来年一月末に実施予定のイラク暫定国民議会選挙など、今後のイラクの復興プロセスにも計り知れない否定的影響を与えています。「しんぶん赤旗」のカイロ駐在記者として、無法の極みというべき今回のファルージャ総攻撃に心の底からの怒りを覚えるとともに、イラク報道で「赤旗」が果たすべき役割がますます重要となっていることを痛感しています。 小泉大介記者
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「しんぶん赤旗」カイロ支局開設から二年。
記者(小泉)はこの地から、そして時にはイラクの現場で米軍による無法なイラク戦争の実態を不十分ながらカバーしてきました。この間、侵略者としての同軍の残虐性をこれでもかと見せつけられた記者にとっても、今回のファルージャ総攻撃ほど、その犯罪性に怒りをかきたてられたことはありませんでした。
総攻撃開始以降の住民の死者は十一月末の段階で、数千人に達しています。
英BBC放送はイラク赤新月社(赤十字社に相当)報道官の話として、同時期までに六千人以上が殺害された可能性があると報じました。
なによりも重大なのは、これだけの無辜(むこ)の命を奪った攻撃が、現在にいたっても終了する気配をまったく見せていないことです。
「米軍はいまも一般市民と武装勢力の区別なく攻撃しています」「ファルージャ市民は医薬品や食料、水、電気もないままに日ごとつのる冬の寒さにさらされています」
これまでファルージャの現地から攻撃の実態に関する情報を本紙に寄せてきたイラク人ジャーナリスト、ファディル・バドラーニ氏は十三日、このような状況を伝えてきました。
ファルージャでは現在も住民の遺体が通りに放置されているため、野犬があちこちから集まり、狂犬病が拡大しています。攻撃で水道を完全に破壊された住民たちは通りにあふれる汚水を飲まざるを得ず、下痢がまん延し、さまざまな伝染病が流行する危険も日々高まってます。
それにもかかわらず、米軍はいまも戦車からの砲撃に加え空爆も行っています。驚くべきことに、情報を外に漏らさないため、バドラーニ氏を含むジャーナリストの徹底排除まで行っています。これまでファルージャに踏みとどまって現場の状況を伝えてきた同氏も、ついに郊外に避難せざるを得なくなっています。
イラクの首都バグダッドに住む主婦のナワル・ジャーセムさん(45)。ファルージャ出身のジャーセムさんは今月初旬、故郷の状況を自らの目で確かめるため同地郊外を訪ねました。ジャーセムさんが本紙に語った言葉が心に残っています。
「私たちは戦争で米軍がやって来た時、イラクを解放し自由をもたらしてくれると期待しました。しかし、彼らは何もしませんでした。それどころか、ファルージャ住民は米国のいう『自由』『民主主義』のためにこれだけの罪のない住民の死という代償を払っているのです。私たちが見たファルージャの光景は、米軍がつくった巨大な墓場です」
(つづく)