日本共産党

2004年12月21日(火)「しんぶん赤旗」

くらし、営業 ばっさり

予算原案 小泉内閣は自画自賛するが


 「メリハリの利いた予算になった」(小泉純一郎首相)、「バランスのとれた『財政構造改革』に一歩を踏み出せた」(谷垣禎一財務相)――。二十日内示された二〇〇五年度予算財務省原案について、小泉内閣は自画自賛しています。しかし、中身をみると、「歳出改革路線の堅持・強化」の方針のもと、くらしや営業のための予算をばっさり削る案です。政府税調や自民・公明の与党税調が打ち出した「大増税路線」と足並みをそろえて踏み出そうとしているのは、家計も経済も破壊する道です。山田英明記者

表

介護も中小企業も

 「歳出削減」の標的として財務原案が狙うのは、庶民のくらし、中小企業の営業、地方にかかわる予算です。

 高齢化の進展などとともに増加する社会保障関係費。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)は予算編成等に関する意見書で「自然増を放置することは許されず」とまで言いました。財務省原案は、来年度の自然増分を大幅に抑制し、社会保障関係費の伸びを、前年度と比べ五千八百十六億円にまで抑えこみました。

 抑制の焦点となったのは、介護保険でした。原案では、特別養護老人ホームなど、介護施設の入所者に食費・居住費の全額自己負担を求めることなどを盛り込んでいます。「歳出改革」の名のもとで、低所得の高齢者からもしぼり取ろうとする姿勢が鮮明です。

 また、原案に盛り込まれた国民健康保険料の国庫負担の削減は、国保料の引き上げにもつながりかねません。

 長引く不況と相次ぐ負担増に多くの中小企業が苦しんでいます。さらに、来年一月から、年間売り上げ一千万円を超える個人事業者が、新たに消費税の課税業者となります。

 苦境にあえぐ中小企業に対する支援は―。原案は、中小企業対策費を前年度比三十四億円も削減し、千七百四億円としました。引き続き、米軍への「思いやり予算」(在日米軍駐留経費、二千三百七十八億円)と比べても少ない予算となっています。

 原案は、国と地方の税・財政の「三位一体の改革」にかかわって、約一兆一千二百億円もの国庫補助負担金の廃止・縮減を盛り込みました。住民サービスに対する国の責任を後退させ、負担を地方に押し付ける内容です。

ムダなくせの声も

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冷え冷えとした家計を大負担がさらに襲います=東京都内の商店街

 「聖域なき歳出改革」をかかげるなら、予算のムダに大胆なメスが入れられたのでしょうか。たしかに、ムダな公共事業として世論の批判が強い公共事業関係費は対前年比3・6%減、軍事費も同1・0%減となっています。

 しかし、財務省原案の中身を見てみると、いびつな「改革像」が浮かび上がります。

 「重点化」というキーワードを通してみると、公共事業関係費は、中枢国際港湾や大都市圏拠点空港、三大都市圏環状道路の整備費など、大型公共事業にかかわるものは軒なみ増加。財政制度等審議会(財務相の諮問機関)でさえ慎重姿勢を示した、関西国際空港の二期事業についても、四百五十七億円を認めました。

 その一方で、道路の維持修繕、地方港湾、下水道、水道などの生活密着型の公共事業の予算は削られています。

 軍事費を見ると、抑制されたといっても約四兆九千億円の予算は維持。戦車などの従来型装備を減額する一方で、「ミサイル防衛」や海外派兵への対応など、最新兵器への重点化をすすめています。

 軍事費には、イラク関連予算も約百四十六億円を盛り込みました。

 「歳出改革」の正体は、国民の生活のための予算を切り詰め、大型公共事業や「新たな軍拡」に予算の使い道を「重点化」していくというごまかしにすぎません。


いま必要なのは“庶民応援策”

 すでに小泉内閣が決めた国民負担増(二〇〇六年度までに実施されるもの)は約三兆円。〇五年一月の年金課税の強化を皮切りに、雇用保険料の引き上げ、厚生年金保険料引き上げなど、増税と社会保障改悪の負担増が本格化します。

 この上さらに、自民、公明両党は、〇五年度与党税制「改正」大綱の中で、所得税・住民税から一定割合を差し引く定率減税を〇五年度に半減(〇六年一月から)し、〇六年度に廃止する方向を打ち出しました。〇七年度からの消費税増税にも言及しました。

 「三年ぶりに一般歳出を前年度以下に抑制した」「四年ぶりに国債発効額を縮減した」「基礎的財政収支を二年連続で改善した」―。谷垣財務相が予算の成果として強調する三点は、増税と国民生活切り詰めの結果にほかなりません。

 小泉内閣による「改革断行予算」(予算編成の基本方針)は、いっそう消費の冷え込みと中小企業・業者の経営悪化、景気低迷を招くだけです。これでは、税収増など望めません。ムダを温存する政治では、さらに財政危機をひどくするだけです。

 いま必要なのは、大増税とくらしのための予算切り詰めをやめさせること。庶民の懐を温め、個人消費を増やし、経済を活性化させることです。

 そうすれば、国の税収増にもつながり、財政再建の道も切り開くことができます。



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