2004年12月21日(火)「しんぶん赤旗」
【ワシントン=浜谷浩司】ラムズフェルド米国防長官が、戦死した兵士の遺族に送った千通を超える追悼の手紙に自分では署名せず、印刷だったことが明らかになり、大きな反響を呼んでいます。同長官への批判が強まる中、「ゴム印」が火に油を注いだ格好です。
「(署名には)強い怒りと嫌悪感を覚えた」――息子をイラクでなくした母親の言葉を十九日、ABCテレビが伝えました。
米軍準機関紙「星条旗」(十九日付)に掲載された同長官の声明は弁解がましく見えます。「悲しみにくれる遺族にいち早く届くよう、自分では署名しなかったもので、今後は一通ずつ署名する」
ブッシュ大統領が同長官の留任を決めてから半月あまり。イラク戦争をめぐる同長官への批判は、戦争を支持する勢力の間にさえ強まっています。
そのきっかけとなったのが、クウェートの米軍基地での発言(八日)。兵士から車両の装甲が足りないと指摘された同長官は、「(理想論ではなく)いまある軍で戦争しているのだ」と開き直りました。
しかし、車両の装甲を請け負う企業が手一杯だとの国防総省の主張が事実でないことが分かるなど、同長官に対する国民の目は厳しさを増しています。
批判は、民主党だけでなく、与党・共和党の実力者らからも上がっています。上院ではマケイン(軍事委員会)、コリンズ(軍事委員会)、ヘーゲル(外交委員会)、ロット(元同党院内総務)の各議員らが同長官に事実上の不信任を突きつけました。
さらに、イラク戦争を熱烈に支持してきたネオコン(新保守主義者)の代表格、ウィリアム・クリストル氏が同長官を次のように批判したことも、驚きをもって迎えられました。
「兵士たちはいまいる国防長官よりも、もっといい長官をもつべきだ」(ワシントン・ポスト紙十五日付)
しかし、ラムズフェルド長官はイラク戦争と「一体」。同長官を更迭する事態になれば、ブッシュ大統領にとって大打撃になります。